映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記⑥
そして、いよいよ本年度最も活力溢れる作品の監督・主演のチームに対し贈られる最優秀作品賞の表彰です。
まずは、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督、及びスタッフ・キャスト一同が表彰されます。
『桐島、部活やめるってよ』の予告編がスクリーンに上映され、スタッフ&キャストを代表して、舞台に立った吉田大八監督。舞台後方には、先に最優秀新進賞を授与された、神木さんと橋本さんが椅子に控えます。
なお、この先の発言の中で、一部、物語の結末に触れている部分がありますので、まだ映画をご覧になられていない方は、ご注意ください。
「ごく普通の高校生たちの日常生活を、多面的に登場人物・できごとに光を当てることによって、この年代のもつ心の揺らぎを繊細に救い上げて、青春の一瞬のきらめきとほろ苦さを鮮やかに切り取りました。第4回TAMA映画賞において、映画ファンに最も活力を与え、最も観客を魅了した作品として、ここに表彰します。」」と読み上げられた表彰状と花束、記念像を受け取られた吉田監督が舞台中央に進みます。
一瞬、言葉を躊躇された吉田監督。
「いま、「おまた!」と言おうとしたのですが、言えば良かったですね。ラッパーに背中を押されて、言おうか言うまいか、ずっと考えていて、かえって中途半端になってしまいました。」と、劇中のセリフと絡めて、場内の笑いを誘います。
「先ほど言われて思い出したのですが、ちょうど1年前の昨年11月23日に高知で撮影が始まりまして、今日がちょうど撮影前のお祓い行った日だったのですね。そのときは、どんな感じだったかなぁと想い出すと、僕も含めてですが、スタッフもキャストもどういう映画になるのか、凄く心配そうな顔をしていて、僕はあまり表立ってはそういう顔はできませんでしたけれども、実は心配がいっぱいでした。どんな映画になるのだろうという想いのままに撮影に入ってしまうような映画も凄いことなのですが、こうしてその1年後に確かに観客の皆さんに届いたんだなという、こんな素晴らしい賞をいただいて、本当にスタッフ、キャストを代表してお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。」とひと言ずつ、噛みしめるように話す吉田監督。
作品タイトルともなっている主人公の桐島を追いかける、今までにないストーリーについて、「僕が桐島を映画化したときに、観客の一人ひとりがどこで桐島を見つけるのか、または見つけないのかということが、割と観る人によって変わる映画になるだろうなとは思っていました。そういう意味で、「桐島はあそこにいたでしょう」とか、いまおっしゃったみたいに「出て来なかったけど」とか、「出て来なかったけど、どうしてくれるんだ」みたいなことを言われる問題作品です。まあ、「そういう映画なのです」ということしか言えないのですが(笑)。もしかしたら、観客の皆さんの中には、まだ観終わったばかりで、頭の中がもやもやっとされている方もいらっしゃるかと思いますが、時間が経ってくると、段々と頭の中でゆっくり融けてくるような、そういう映画だと想いますので、噛み締めていただければと思います。」とメッセージを贈ります。
映画は、原作を大胆にアレンジしていますが、大ベストセラー作品の映像化にあたっては、事前に原作者である朝井リョウさんの母校の高校まで見学に行き、空いていた席があったので、実際に3時間ほどそこに座って、高校生と一緒に授業を受けられて来たそう。
その時の感想を「高校生ってこんなに大変だったんだ、席に座っているだけでも、こんなに集中力がいるんだということを、久しぶりに思い出しました。」と語る吉田監督。
朝井さんとの打合せは、それほど何度もということではなかったとのことですが、「原作で表現したかった世界観だけを表現してくれれば、映画はご自由にしてください。」と言っていただけたので、自分の好きなようにさせていただいたという吉田監督。その後、朝井さんと一緒に完成後の映画を観る機会が何度かあり、凄く映画を気に入っていただけたとのことで、「このような原作者と出逢えたことは、凄く幸せなことだと思います」と感謝の言葉を紡ぎます。
(こちらが、朝井リョウさんの原作小説)
『桐島、部活やめるってよ』は、公開当初の観客動員こそ小さかったものの、口コミでどんどん広まっていき、遂には“桐島現象”という言葉まで産み出しました。
「“現象”と言われているモノに関しては、僕の責任ではない、と言うと変な言い方ですが。」と吉田監督。
「皆さんの中の色々な記憶とか蓋をしていたものが、映画がきっかけとなって、どんどん開かれて、皆さん、『桐島』の話をしているようで、実は自分の高校のときの話をしていることが多い。それが凄く「ああ、大変なことをしてしまったのかな」と感じています。映画そのものも含めてですけれども、映画そのものから引き出された、個人個人の体の感情が、引き出すとこんなにも強くて凄いことなんだということを思いました。」と“桐島現象”という言葉について語られます。
ここで主演のふたり神木隆之介さんと橋本愛さんも壇上中央に招かれ、出演作品が最優秀作品賞を受賞した感想について聞かれます。
神木さんは、「凄く幸せなことだなと思います。こんなにも皆さんの心の中に届いて、愛されている、そんな作品に参加させていただいて、本当に僕は幸せだなと思っています。皆さんに感謝しています。ありがとうございます。」
橋本さんは、「私は、この映画が凄く大好きで、出演者の身としてもそうなのですが、別の立場からこの映画を観ても、観終わった後に自分の実感がどんどん揺れていく感じが初めての体験だったので、お客さんの立場としても、この映画に出逢えたことが、凄く幸せだったし、こんな作品の一部に自分がなっているということが、また凄く幸せだし、こんなことはめったにないと思うので、出逢わせてくれて、こんな作品を創ってくれて、ありがとうございます。」と感謝の言葉を綴ります。
監督から見た、主演のふたりについては、「やはり若い時から色々な経験をしてきているおふたりですし、高校生のお話しということで、僕からすれば遠い昔の話ですけれども、彼らは、「そこで手を抜いたら承知しないからな」というような無言のプレッシャーというか、視線の鋭さは、彼らふたりに限らず、他の若い子からも感じましたし、「いい加減なものは創るな」と、そういうものをひしひしと感じて、それに背中を凄く強く押されたという部分はありますね。」と若い俳優たちの映画に対する真摯な姿を讃えます。
最後に、今後の予定と抱負を聞かれた吉田監督、「『桐島』の続編は多分ないと思います(笑)。ただ、今後も皆さんの心に届くような映画に関わっていきたいと、このような機会をいただく度に想います。どうもありがとうございました。」と締めくくられます。
(りょう)
つづく
まずは、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督、及びスタッフ・キャスト一同が表彰されます。
『桐島、部活やめるってよ』の予告編がスクリーンに上映され、スタッフ&キャストを代表して、舞台に立った吉田大八監督。舞台後方には、先に最優秀新進賞を授与された、神木さんと橋本さんが椅子に控えます。
なお、この先の発言の中で、一部、物語の結末に触れている部分がありますので、まだ映画をご覧になられていない方は、ご注意ください。
「ごく普通の高校生たちの日常生活を、多面的に登場人物・できごとに光を当てることによって、この年代のもつ心の揺らぎを繊細に救い上げて、青春の一瞬のきらめきとほろ苦さを鮮やかに切り取りました。第4回TAMA映画賞において、映画ファンに最も活力を与え、最も観客を魅了した作品として、ここに表彰します。」」と読み上げられた表彰状と花束、記念像を受け取られた吉田監督が舞台中央に進みます。
一瞬、言葉を躊躇された吉田監督。
「いま、「おまた!」と言おうとしたのですが、言えば良かったですね。ラッパーに背中を押されて、言おうか言うまいか、ずっと考えていて、かえって中途半端になってしまいました。」と、劇中のセリフと絡めて、場内の笑いを誘います。
「先ほど言われて思い出したのですが、ちょうど1年前の昨年11月23日に高知で撮影が始まりまして、今日がちょうど撮影前のお祓い行った日だったのですね。そのときは、どんな感じだったかなぁと想い出すと、僕も含めてですが、スタッフもキャストもどういう映画になるのか、凄く心配そうな顔をしていて、僕はあまり表立ってはそういう顔はできませんでしたけれども、実は心配がいっぱいでした。どんな映画になるのだろうという想いのままに撮影に入ってしまうような映画も凄いことなのですが、こうしてその1年後に確かに観客の皆さんに届いたんだなという、こんな素晴らしい賞をいただいて、本当にスタッフ、キャストを代表してお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。」とひと言ずつ、噛みしめるように話す吉田監督。
作品タイトルともなっている主人公の桐島を追いかける、今までにないストーリーについて、「僕が桐島を映画化したときに、観客の一人ひとりがどこで桐島を見つけるのか、または見つけないのかということが、割と観る人によって変わる映画になるだろうなとは思っていました。そういう意味で、「桐島はあそこにいたでしょう」とか、いまおっしゃったみたいに「出て来なかったけど」とか、「出て来なかったけど、どうしてくれるんだ」みたいなことを言われる問題作品です。まあ、「そういう映画なのです」ということしか言えないのですが(笑)。もしかしたら、観客の皆さんの中には、まだ観終わったばかりで、頭の中がもやもやっとされている方もいらっしゃるかと思いますが、時間が経ってくると、段々と頭の中でゆっくり融けてくるような、そういう映画だと想いますので、噛み締めていただければと思います。」とメッセージを贈ります。
映画は、原作を大胆にアレンジしていますが、大ベストセラー作品の映像化にあたっては、事前に原作者である朝井リョウさんの母校の高校まで見学に行き、空いていた席があったので、実際に3時間ほどそこに座って、高校生と一緒に授業を受けられて来たそう。
その時の感想を「高校生ってこんなに大変だったんだ、席に座っているだけでも、こんなに集中力がいるんだということを、久しぶりに思い出しました。」と語る吉田監督。
朝井さんとの打合せは、それほど何度もということではなかったとのことですが、「原作で表現したかった世界観だけを表現してくれれば、映画はご自由にしてください。」と言っていただけたので、自分の好きなようにさせていただいたという吉田監督。その後、朝井さんと一緒に完成後の映画を観る機会が何度かあり、凄く映画を気に入っていただけたとのことで、「このような原作者と出逢えたことは、凄く幸せなことだと思います」と感謝の言葉を紡ぎます。
(こちらが、朝井リョウさんの原作小説)
『桐島、部活やめるってよ』は、公開当初の観客動員こそ小さかったものの、口コミでどんどん広まっていき、遂には“桐島現象”という言葉まで産み出しました。
「“現象”と言われているモノに関しては、僕の責任ではない、と言うと変な言い方ですが。」と吉田監督。
「皆さんの中の色々な記憶とか蓋をしていたものが、映画がきっかけとなって、どんどん開かれて、皆さん、『桐島』の話をしているようで、実は自分の高校のときの話をしていることが多い。それが凄く「ああ、大変なことをしてしまったのかな」と感じています。映画そのものも含めてですけれども、映画そのものから引き出された、個人個人の体の感情が、引き出すとこんなにも強くて凄いことなんだということを思いました。」と“桐島現象”という言葉について語られます。
ここで主演のふたり神木隆之介さんと橋本愛さんも壇上中央に招かれ、出演作品が最優秀作品賞を受賞した感想について聞かれます。
神木さんは、「凄く幸せなことだなと思います。こんなにも皆さんの心の中に届いて、愛されている、そんな作品に参加させていただいて、本当に僕は幸せだなと思っています。皆さんに感謝しています。ありがとうございます。」
橋本さんは、「私は、この映画が凄く大好きで、出演者の身としてもそうなのですが、別の立場からこの映画を観ても、観終わった後に自分の実感がどんどん揺れていく感じが初めての体験だったので、お客さんの立場としても、この映画に出逢えたことが、凄く幸せだったし、こんな作品の一部に自分がなっているということが、また凄く幸せだし、こんなことはめったにないと思うので、出逢わせてくれて、こんな作品を創ってくれて、ありがとうございます。」と感謝の言葉を綴ります。
監督から見た、主演のふたりについては、「やはり若い時から色々な経験をしてきているおふたりですし、高校生のお話しということで、僕からすれば遠い昔の話ですけれども、彼らは、「そこで手を抜いたら承知しないからな」というような無言のプレッシャーというか、視線の鋭さは、彼らふたりに限らず、他の若い子からも感じましたし、「いい加減なものは創るな」と、そういうものをひしひしと感じて、それに背中を凄く強く押されたという部分はありますね。」と若い俳優たちの映画に対する真摯な姿を讃えます。
最後に、今後の予定と抱負を聞かれた吉田監督、「『桐島』の続編は多分ないと思います(笑)。ただ、今後も皆さんの心に届くような映画に関わっていきたいと、このような機会をいただく度に想います。どうもありがとうございました。」と締めくくられます。
(りょう)
つづく
高田世界館さんにて映画『転校生』上映
『野のなななのか』TAMA映画賞・最優秀作品賞受賞!
エキストラ虎の巻
おめでとう☆彡
映画『月とキャベツ』上映&トークイベント開催決定!
銀映館ふたたび~世界館で『シグナル-月曜日のルカ』上映!
『野のなななのか』TAMA映画賞・最優秀作品賞受賞!
エキストラ虎の巻
おめでとう☆彡
映画『月とキャベツ』上映&トークイベント開催決定!
銀映館ふたたび~世界館で『シグナル-月曜日のルカ』上映!
2013年03月16日 Posted byひがしざわ at 08:00 │Comments(0) │未来に紡ぐ
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。