祝☆ご結婚

 谷口正晃監督作品『時をかける少女』に主演をされた仲里依紗さんと中尾明慶さんのご結婚が、昨日発表されましたね。
 びっくりしました。

 映画では結ばれることのなかったあかりと涼太の想いが、時をかけ、時を巡って、2013年の桜の季節にハッピーエンドを迎えたこと、大変嬉しく思います。
 これも、“映画の神さまが紡いだ縁”ですね。

(仲里依紗さんからファンに向けてのメッセージは、仲さんのブログ『B型革命』にて-)

 
(2010年4月『時をかける少女』に登場する福島県郡山市開成山公園の満開の桜並木)

 作品とともにしげぞーさんと各地の舞台挨拶を巡った際、中尾さんが仲さんのことを、劇中の涼太さながらに、目を細めてとても気にかけていらっしゃった姿が、今でも印象に残っています。

(映画『時をかける少女』公開時のおふたりの様子は、2010年3月23日付け記事『想いはどこまでもかけつづけて~時をかける少女初日舞台挨拶編②』に)


 新たな物語のはじまりを迎えた仲里依紗さん&中尾明慶さん、末永くお幸せに☆



(りょう)  


2013年03月22日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(1)未来に紡ぐ

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記⑦

 そして、第4回TAMA映画賞授賞式のラストを飾るのは、最優秀作品賞『この空の花~長岡花火物語』の大林宣彦監督。

 おなじみの映画の予告編がスクリーンに流された後、名前を紹介された大林監督。まずはいつものように純白のスクリーンを慈しむように“アイ・ラブ・ユー”マークを捧げてから、賞状授与のために舞台中央に立たれた大林監督は、心の底から嬉しそうな、にこやかな表情をされていました。
 「平和への願い、未来への希望を祈る想いとイマジネーションがずっしり詰まったこの作品は、大震災の体験をとおして生き方を見つめ直している私たちに、生きることの意義を改めて喚起し、多くの人に勇気を与えてくれました。第4回TAMA映画賞において、映画ファンに最も活力を与え、最も観客を魅了した作品として、ここに表彰します。」と授賞理由を読み上げられて賞状と多摩焼きで造られた記念像を渡されると、受け取った記念像をトントンと優しく撫でられていました。


(記念像は、多摩市の土で焼いた多摩焼きでできています。男性と女性をモチーフにしたもので、今回、特別に焼いていただいた物だそうです。地元の陶芸家である中村さんの作品で、全て、ひとつひとつ手作りで創られているとのことです。)

 受賞に際してのコメントを司会者から促されて、
 「この人間の世に、映画が誕生したという奇跡、その奇跡を信じて、その軌跡に心から敬意を表して、22という数字の歳月を重ねて来られたTAMA映画フォーラムの皆さん、そして、会場を埋め尽くした映画への愛に溢れるみなさん、そしてまた、現代の日本映画の未来につながる授賞された皆さん、映画をこしらえてこしらえて、いつのまにか老人と言われる歳になってしまいましたが、この中に、私も仲間に入れさせていただいて、今日はありがとうございます。私も半世紀前から、『サイタマノラッパー』のようなインディーズでありました。何が無くても自由がある、芸術というものは自由にこしらえるものだということで、その自由を信じて映画を創ってまいりました。今度の映画も、私と50年ともに映画を創ってまいりました家族でもありプロデューサーでもある大林恭子や娘の千茱萸をはじめ、この家族が、2011年の夏、映画創りのために訪れた長岡という里で、今こそ、スタッフ・キャストを超えて、人として参加をしたい、人としてこの映画の現場にいれば、きっと何かが見つかるはずだと信じて集まってくれた映画の仲間たち。そして、更には、私たちがワンダーランドと呼んだ、この3・11で見失った私たちの心を、未来に向けて、このように進んだら良いのだと筋道を示してくださった長岡の志。その志を通じて、この映画を一緒に創ってくれた長岡の人たち。自主製作、自主上映を目指して、この4月から上映を始めて、今でも毎週末どこかで封切が続いているという。そういう映画が、今日、この日に、このTAMA映画フォーラムにたどり着いて、いえいえ、熱く熱く迎えていただいて、この場で皆さんにこうしてご挨拶ができて、そして、こんな素敵なご褒美をいただいて、映画も観ていただけるということは、私にとっては、まさに映画の奇跡が、私の人生に舞い降りてきました。私を支えてくれた、この映画を創ってくれた、今日ともに受賞した私の家族に心からの敬意と感謝を捧げたいと思います。皆さん、どうもありがとうございました。」と長文のメッセージで満員の客席に喜びを伝える大林監督。そして、拍手が鳴りやまない客席。この日の会場には、長岡の森民夫市長からも祝電が届けられていました。

 「撮影に入られる前に東日本大震災があり、脚本を大幅に見直されたと伺っているのですが。」と司会者に尋ねられて-
 「3月11日のときは、私たちの心のスクリーンが真っ白になって、これまで信じていたことが全部覆されました。今でも戸惑っている。将来をどのように生きれば良いのか、それが全く分からなかったとき、しかし、私たちは生きているということは表現することだから、映画を創ることだということで、ともかく映画を創り続ける、シナリオは毎日毎日書き変える。映画がとりあえず完成したのが、今年の2月ですけれども、いまだにシナリオを描き直し続けています。この映画にはEND Markをつけていないのでね。それがまだ続いています。」

 続いて、「震災の時に福島の高校生の皆さんと交流があったと伺っているのですが。」と聞かれて、
 「私たちは、想像力をもって、あえて東日本の被災地には足を運ばず、同じ中越大地震という震災を体験し、ようやく復興を遂げたという長岡で撮影をしていたのですが、映画の中に、南相馬の少年が登場します。その少年のふる里を、映画の撮影後に訪れました。尋ねてみましたところ、皆さんも覚えていらっしゃいますか、瓦礫の中、桜の枝の1本に桜の花が咲いた。人間があまりにも小さいから、大震災にあったけれども、これは自然の理であって、こんなに小さな桜の花ですら、自然を守って、綺麗な花を咲かせている。私たち人間の心も、この桜と一緒に、命を大切にして生きようと、その高校の先生が、壊れた学校の校舎に、瓦礫に花の絵を画く『花瓦礫』という授業を始められたのです。大人は、瓦礫はごみですから、瓦礫は片付ければ良いと思っているのですが、子供にとっての校舎の瓦礫は、愛おしい学びの記憶が残るものですから、この校舎の痛みと共に、自分たちは復興していくのだという、この姿勢がまさに長岡の痛みを忘れぬ、そこから学んだ知恵で生きていこうということに結びつくものですから、私はこの『花瓦礫』とこの映画を一緒にして、全国の上映地を巡ろうと想いました。そこで、その先生に手紙を書こう思いましたら、住所の最後が、“字元木”というのです。これは、これから映画をご覧になったときに、この映画の主人公が“元木花”という名前なのですね。偶然のように、『字元木の花瓦礫』だったのです。あっ、この映画は私たちが創った映画ではないな。何か、上の方にいる人が、大地震を起こしたり、津波を起こしたり、あるいは、桜の花を見事に咲かせたりする。そんな自然の意志が、この映画を創らせたくれたんだなと、そんな風に思いました。」と福島との繋がりについて語る大林監督。


(震災と原発事故直後の2011年5月、福島県郡山市開成山公園に咲く『時かけ』の桜花)


(『この空の花~長岡花火物語』の上映会場では、すっかりお馴染みとなった花瓦礫パネル)

 映画祭のパンフレットの中に寄稿されているメッセージの中で、「これはやっぱり映画だったのですね。皆さんありがとう。」という言葉で締めくくられていることについて、この言葉に込めた想いを、「3月11日に、いままで信じていた劇映画、そんなものは創っても仕方がない、となりました。しかし、同時に、エジソンやルメールが映画を発明したときに、この芸術は、無限の可能性があったはずなのです。それが、いつの間にか商業主義の中で、2時間の劇映画とドキュメンタリーという、たった2つの分野しかなくなってしまったというのは、何とも勿体ない。もっともっと色々な可能性があるはずだと思いまして、例えば、私が長岡で見聞したことと、それに対して想像力でふくらませた随想というものを織り交ぜて、徒然草の様な、あるいは、私は大学で映像社会学という授業をやっていますので、映像社会学の先生が、論文を映画で描いたとしたら、そんなものは映画ではない。そういうことで、ともかく3・11の混沌を一所懸命に映画にしました。その気持ちは必ずや皆さんに伝わるだろうと信じてはおりますが、もはやこれを映画ということで認定されて、最優秀作品賞までもらえることになるということは、考えてもおりませんでしたけれども、本当にありがたいことです。」

 この日、最優秀新進監督賞を受賞された沖田修一監督の最新作、現在公開中の『横道世之介』も、上映時間が2時間40分となる長編大作です。作品に合わせて、様々な上映時間の映画があれば、より楽しみが広がりますね。

 映画『この空の花~長岡花火物語』の上映は、この授賞式の後にかけられます。そこで、大林監督からこれから作品を観る来場者に向けて、映画の紹介とメッセージが贈られます。

 「長岡という里は、戊辰戦争で敗れた里です。そのときにもらった支援の米百俵。これを売って、学校を建てて、庶民の子を学ばせて、その庶民の子が長岡を復興させました。復興とは、物、金のみではない、むしろ人である。人を育てよう。その精神なのですね。それが太平洋戦争後の空襲の後も、長岡では花火を打ち上げることで、希望を持たせた。そして、中越大地震の後には、フェニックスという花火を打ち上げることで、子供たちの未来に希望を持たせる。そういう信念で支えられてきた。まさにそれが、これからの復興は、物、金だけじゃない、美しい人、未来に希望を持つ人間をこそ育てよう、という長岡の指針をこそ、私たちは3・11後の映画としました。これは、普通の劇映画にはなりません。例えて言えば、ピカソのゲルニカです。ご存じですよね。あれはピカソの祖国スペインが1939年にドイツ軍の攻撃で灰塵に帰した。そういう記録なのですが、リアルな記録は風化します。なぜならば、目を背けたくなる、観たくない、忘れたい、そういうことが多いからです。日本でも、多くの戦争や震災などの悲劇が風化しました。この3・11もまた風化してしまうかもしれない。だから、私は、決して風化をしないジャーナリズムが必要ではないかと思ったのです。まさにゲルニカは、芸術です。不思議で、面白くもあって、美しい。だからこそ、人々はあの戦争をいつまでも忘れない。小さな子供ですらが、あの絵を見ながら、「このお婆ちゃん、何でこんな顔をしているの。戦争があって殺されたの。ああ、嫌だな、怖いな。だから戦争のない世界を創ろうね。」というように、平和への願いは風化しません。そんな訳で、私はこの映画は、ゲルニカに倣って創りました。大人から見ると、子供がかった映画にも見えるだろうし、また、難しいような映画に見えるかもしれませんが、この映画を観てくれた4歳の子供が、お父さんにこう言いました。「お父さん、僕は、いま、生きているの」。このひと言で十分です。そのことから生きているということのありがたさ、大切さ、そして、亡くなっていった人たちへの想いを、その子が育つと共に、どんどん風化させないで記憶していってくれれば、いつかこの映画の山下清さんがおっしゃったように、「世界中の爆弾を花火に代えて打ち上げたなら、世界から戦争なんてなくなるのにな。」という、そういう平和を祈るような世界を築くことができるかもしれない。そういう時代が来た日にこそ、この映画にEND Markをつけようと、そう想って創りました。どうか皆さんも小さな子供が、あのゲルニカの絵の前に立ったような気持ちで、「不思議だな、何だか面白いな、でも、とっても綺麗だな」というような気持ちでこの映画を観てくれたならと思います。これが、芸術の役割、芸術の風化しないジャーナリズムだと思います。どうか、よろしくお願いいたします。」

 スクリーンに向かって「長岡の仲間たち、良かったね、一緒にこの映画を創って。これが、映画の美しさと力だね。ありがとう。」と遠く離れた長岡の仲間に向けて、メッセージを届ける大林監督。

 最後に、今後の抱負とご予定を聞かれた大林監督。
 「実は、つい1週間ほど前に、僕はまた長岡に行きまして、その『花瓦礫』をテーマに、福島の高校生と長岡の高校生の劇映画を既に創ってしまいました。」と、電撃的な新作発表があり、場内は拍手に包まれます。
 「そして、私が20年間やっております北海道芦別の映画学校で、20年を記念して、『野のなななのか』という映画をクランクインをいたしました。そんな訳で、ひい爺ちゃんはまだまだ元気でございます。よろしくお願いします。」

(『野のなななのか』の公式サイトはコチラから)

 大林監督からのサプライズな2作品のプレゼント。
 この時点では、芦別での新作は、昨年の『星の降る里・芦別映画学校』の場で制作発表があった作品『野のなななのか』は知っていたのですが、福島&長岡で撮られたという新作は、福島の『花瓦礫』を題材にした作品というお話しだけでしたので、『この空の花~長岡花火物語』の続編かな?と思ったりしていたのですが、後に、AKB48さんの新曲『So long!』のMVであることが分かりましたね。MVでありながら、67分というちょっとした短編映画にも匹敵するこだわりの力作となった本作。MVの発表に合わせて、大林監督からは「AKBの諸君と仕事することが楽しくて、アイディアがどんどん沸いてきてね、なんと64分の劇映画を作ってしまいました! 僕はもう、彼女たちのひいお爺ちゃんかもしれない。若い人たちに、ひいお爺ちゃんの体験したこと、学んだことの全てを伝えれば、彼女たちがまたそこから新しい未来を作ってくれる力になるだろう。」とのメッセージを寄せられていますが、実際に映像を拝見させていただいたところ『この空の花~長岡花火物語』と同じロケ地が登場したり(中越高校の先生役が高嶋政宏さん!)、福島県南相馬市からの転校生(松井珠理奈さん)、一輪車こそ自転車に変わっていますが、正に映画の世界観そのままに再現されていましたね。一部では、大林宣彦監督とAKB48との意外なコラボレーションに否定的な意見もあるようですが、作品中の「人間らしく幸せに生きることが、どんどん難しくなっていくこの時代。しかし若者たちよ、夢を持ってほしい。君たちは未来に生きる人たちだ。その未来を君たち自身の夢で創ってほしい。きっとできるよ。それを信じて夢を持て、希望を持て、あきらめるな、勇気を持て。これから生まれてくる子供たち。その父となり母となる君たちよ、僕は心から誇りに想うよ。君たちと一緒に生きることができて、本当に嬉しかった。ありがとう。So long!」というメッセージにこめられているように、大林監督が映画『この空の花~長岡花火物語』に込めた想いを、一番伝えたかった南相馬の少年のような次世代を生きる若い人たちに届けたいというお気持ちがあったからこそ引き受けられたのだと思います。このMVを通じて、多くの方に『福島の花瓦礫』を知っていただくことができますし、そう言った意味で、通常のMVやPVにはない、メッセージ性の強いものとなっています。このMVが、本当に作品を観てもらいたい若い人たちに、『この空の花~長岡花火物語』に触れてもらえるきっかけとなれば、嬉しいですね。


(こちらがMVが納められた『So long!』のCD。ジャケット裏面を良く読むと、“MV”ではなく“The Movie”と…笑)

 授賞式典後の記念撮影では、ベテランの少年らしく、受賞者のまとめ役として、カメラマンの注文など場を仕切られていた大林監督。受賞者一同が集まった際には、最優秀男優賞を受賞され、長岡映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六』で主演を務められた役所広司さんと、長岡コンビでガッチリと固い握手を交わされていました。

 この日の授賞式には、新進女優賞を受賞された元AKB48の前田敦子さんや橋本愛さんが登壇されるということもあり、会場には10代、20代の若い人たちも数多く来場されていました。授賞式に引き続いての『この空の花~長岡花火物語』の上映では、これまでの劇場公開ではあまり見かけることのなかった若い人たちにも、作品に触れていただく貴重な時間となりました。監督が一番伝えたかった未来を創る若い世代の人たちに、この作品が届けられたことは、監督も嬉しかったでしょうし、先日発売されたAKB48さんの新曲『So long!』のMV制作と同様、監督の想いを届ける素晴らしい機会になったと思います。

 さて、今回の受賞対象者は一般的な映画賞とは違い『大林宣彦監督、及びスタッフ・キャスト一同』となっており、ボランティアやエキストラも含め、この作品に携わった全ての人に対して贈られた賞です。エキストラとしてこの作品のほんの一部でもお手伝いができたりょうとしては、今回の受賞は、自分のことのように嬉しく思います。会場には、恭子さんや千茱萸さんらとご家族で駆けつけられ、エキストラ参加者や馴染みのある人たちが、想い想いに会場ロビーでお祝いの言葉をかけられていました。



 年が明けてからも、いわきぼうけん映画祭や水戸映画祭など、各地の映画祭で毎週のようにかけられている『この空の花~長岡花火物語』。
 END Markの付けられていない『この空の花~長岡花火物語』の脚本も、まだまだ毎日書き直されているとのこと。今後は、パールハーバーでの長岡花火打ち上げを加えた続編があったりするかも!?

 花の種は、まだまだ日本各地に蒔かれていきそうですね。

(りょう)  


2013年03月17日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(1)未来に紡ぐ

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記⑥

 そして、いよいよ本年度最も活力溢れる作品の監督・主演のチームに対し贈られる最優秀作品賞の表彰です。



 まずは、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督、及びスタッフ・キャスト一同が表彰されます。
 『桐島、部活やめるってよ』の予告編がスクリーンに上映され、スタッフ&キャストを代表して、舞台に立った吉田大八監督。舞台後方には、先に最優秀新進賞を授与された、神木さんと橋本さんが椅子に控えます。

 なお、この先の発言の中で、一部、物語の結末に触れている部分がありますので、まだ映画をご覧になられていない方は、ご注意ください。

 「ごく普通の高校生たちの日常生活を、多面的に登場人物・できごとに光を当てることによって、この年代のもつ心の揺らぎを繊細に救い上げて、青春の一瞬のきらめきとほろ苦さを鮮やかに切り取りました。第4回TAMA映画賞において、映画ファンに最も活力を与え、最も観客を魅了した作品として、ここに表彰します。」」と読み上げられた表彰状と花束、記念像を受け取られた吉田監督が舞台中央に進みます。

 一瞬、言葉を躊躇された吉田監督。
 「いま、「おまた!」と言おうとしたのですが、言えば良かったですね。ラッパーに背中を押されて、言おうか言うまいか、ずっと考えていて、かえって中途半端になってしまいました。」と、劇中のセリフと絡めて、場内の笑いを誘います。

 「先ほど言われて思い出したのですが、ちょうど1年前の昨年11月23日に高知で撮影が始まりまして、今日がちょうど撮影前のお祓い行った日だったのですね。そのときは、どんな感じだったかなぁと想い出すと、僕も含めてですが、スタッフもキャストもどういう映画になるのか、凄く心配そうな顔をしていて、僕はあまり表立ってはそういう顔はできませんでしたけれども、実は心配がいっぱいでした。どんな映画になるのだろうという想いのままに撮影に入ってしまうような映画も凄いことなのですが、こうしてその1年後に確かに観客の皆さんに届いたんだなという、こんな素晴らしい賞をいただいて、本当にスタッフ、キャストを代表してお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。」とひと言ずつ、噛みしめるように話す吉田監督。

 作品タイトルともなっている主人公の桐島を追いかける、今までにないストーリーについて、「僕が桐島を映画化したときに、観客の一人ひとりがどこで桐島を見つけるのか、または見つけないのかということが、割と観る人によって変わる映画になるだろうなとは思っていました。そういう意味で、「桐島はあそこにいたでしょう」とか、いまおっしゃったみたいに「出て来なかったけど」とか、「出て来なかったけど、どうしてくれるんだ」みたいなことを言われる問題作品です。まあ、「そういう映画なのです」ということしか言えないのですが(笑)。もしかしたら、観客の皆さんの中には、まだ観終わったばかりで、頭の中がもやもやっとされている方もいらっしゃるかと思いますが、時間が経ってくると、段々と頭の中でゆっくり融けてくるような、そういう映画だと想いますので、噛み締めていただければと思います。」とメッセージを贈ります。

 映画は、原作を大胆にアレンジしていますが、大ベストセラー作品の映像化にあたっては、事前に原作者である朝井リョウさんの母校の高校まで見学に行き、空いていた席があったので、実際に3時間ほどそこに座って、高校生と一緒に授業を受けられて来たそう。
 その時の感想を「高校生ってこんなに大変だったんだ、席に座っているだけでも、こんなに集中力がいるんだということを、久しぶりに思い出しました。」と語る吉田監督。
 朝井さんとの打合せは、それほど何度もということではなかったとのことですが、「原作で表現したかった世界観だけを表現してくれれば、映画はご自由にしてください。」と言っていただけたので、自分の好きなようにさせていただいたという吉田監督。その後、朝井さんと一緒に完成後の映画を観る機会が何度かあり、凄く映画を気に入っていただけたとのことで、「このような原作者と出逢えたことは、凄く幸せなことだと思います」と感謝の言葉を紡ぎます。


(こちらが、朝井リョウさんの原作小説)

 『桐島、部活やめるってよ』は、公開当初の観客動員こそ小さかったものの、口コミでどんどん広まっていき、遂には“桐島現象”という言葉まで産み出しました。
 「“現象”と言われているモノに関しては、僕の責任ではない、と言うと変な言い方ですが。」と吉田監督。
 「皆さんの中の色々な記憶とか蓋をしていたものが、映画がきっかけとなって、どんどん開かれて、皆さん、『桐島』の話をしているようで、実は自分の高校のときの話をしていることが多い。それが凄く「ああ、大変なことをしてしまったのかな」と感じています。映画そのものも含めてですけれども、映画そのものから引き出された、個人個人の体の感情が、引き出すとこんなにも強くて凄いことなんだということを思いました。」と“桐島現象”という言葉について語られます。

 ここで主演のふたり神木隆之介さんと橋本愛さんも壇上中央に招かれ、出演作品が最優秀作品賞を受賞した感想について聞かれます。
 神木さんは、「凄く幸せなことだなと思います。こんなにも皆さんの心の中に届いて、愛されている、そんな作品に参加させていただいて、本当に僕は幸せだなと思っています。皆さんに感謝しています。ありがとうございます。」
 橋本さんは、「私は、この映画が凄く大好きで、出演者の身としてもそうなのですが、別の立場からこの映画を観ても、観終わった後に自分の実感がどんどん揺れていく感じが初めての体験だったので、お客さんの立場としても、この映画に出逢えたことが、凄く幸せだったし、こんな作品の一部に自分がなっているということが、また凄く幸せだし、こんなことはめったにないと思うので、出逢わせてくれて、こんな作品を創ってくれて、ありがとうございます。」と感謝の言葉を綴ります。

 監督から見た、主演のふたりについては、「やはり若い時から色々な経験をしてきているおふたりですし、高校生のお話しということで、僕からすれば遠い昔の話ですけれども、彼らは、「そこで手を抜いたら承知しないからな」というような無言のプレッシャーというか、視線の鋭さは、彼らふたりに限らず、他の若い子からも感じましたし、「いい加減なものは創るな」と、そういうものをひしひしと感じて、それに背中を凄く強く押されたという部分はありますね。」と若い俳優たちの映画に対する真摯な姿を讃えます。

 最後に、今後の予定と抱負を聞かれた吉田監督、「『桐島』の続編は多分ないと思います(笑)。ただ、今後も皆さんの心に届くような映画に関わっていきたいと、このような機会をいただく度に想います。どうもありがとうございました。」と締めくくられます。

(りょう)

つづく  


2013年03月16日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記⑤

 映画ファンを魅了した事象に対し表彰される『特別賞』。
 本年度は、ありあまる母性によって自らが破綻していく、『KOTOKO』の壮絶な女性像に対して塚本晋也監督&Coccoさんに、また、映画界に新風を巻き起こした『SR サイタマノラッパー』シリーズの快進撃に対して入江悠監督及びスタッフ・キャスト一同に贈られました。

 この日、塚本晋也監督とCoccoさんは、お仕事の都合ということで、来祭できませんでしたが、「母親なら誰しも感じたことのある、弱い存在を抱えて世界と向き合わねばならない恐怖を、塚本晋也監督とCoccoの創造力をもってこの上なく美しく痛ましい映像で表現し、生きていくことへの覚悟を示してくれた。」と受賞理由が紹介され、会場には塚本監督からのビデオメッセージが流されました。
 塚本監督は、Coccoさんがデビューした当時から、初めて歌を聴いたときに、詞の世界がはっきりと映像として見えたこと、そして、Cocco自身さんが歌っている姿そのものが、とても魅力的に伝わってきたので、監督自身Coccoさんの描く世界を見てみたいという気持ちから、いつか自分の映画に出演してもらいたいと思っていたそうです。何度かトライしていく中で、『KOTOKO』には出ていただけるということになり、監督にとっては特別な作品となったそうです。映画の撮影開始直前に、東日本大震災があり、自分の身の回りで、子供のことをもの凄く心配している母親の姿など、全部が『KOTOKO』とシンクロして、全部がその瞬間に集まって爆発したような映画になっています、とメッセージを寄せられました。

 続いてが、『SR サイタマノラッパー』シリーズの入江悠監督が、スタッフ・キャストを代表して登壇されます。
 「シリーズをとおして、インディーズ精神はそのままに、出演者、制作者一丸となって本格派エンタテインメント作品へとステップアップしていった快進撃は映画ファンを熱狂させた。」と読み上げられた表彰状を受け取ると、授与式の途中で、作品にちなんだ色とりどりのラッパー軍団が突如壇上に乱入。会場が拍手に包まれます。

 「ちょっとタイミングがね、ずれましたね」と入江監督。
 それでは、ということで、ラッパー軍団は、一旦引き揚げます(笑)

 司会者も、少し笑いをこらえながら、監督に授賞の挨拶を促します。
 「インディーズが、なぜインディーズと言われるのかというと、縛られることが何もないから。誰からも怒られないということで、今日はスペシャルゲストを呼んでいます。カラフルな人たちが来ていますので、SHOUGUNとそのクルーの皆さんです。どうぞ。」と仕切り直しの登場に会場は大爆笑の渦に包まれます。

 ここで、赤、黄、青など色とりどりのつなぎを着たラッパー軍団が再び登場。
 「せっかくなので、皆さんひと言ずつお願いできれば」とマイクを向けられた主演の駒木根隆介さん。
 「ここでかましちゃってください。」と入江監督。
 YOYOYOYO~♪と、ラップのリズムに乗せて皆さんからひと言ずつ。会場には手拍子が響き渡ります。今回の受賞者の作品にちなんだラップを即興で披露します。

 (この日のラッパー軍団の活躍は、『SR サイタマノラッパーシリーズ公式ブログ』にて詳しく紹介されています。)

 お祭りを盛り上げるパフォーマンスが終わり、「時間の関係もあるので、それでは、先に進みましょう」という司会者に「大林監督の話が伸びるから大丈夫」と笑いを取る入江監督。
 ラッパー軍団の登場は、大林監督も非常に楽しかったようで、『この空の花~長岡花火物語』の公式サイトでも触れられています。

 今後の抱負と、今後のご予定を聞かれた入江監督。
 「僕としては、『サイタマノラッパー』はⅢで一応終了と考えています。」と言うと、会場からは「えーっ」という声が。
 「一時期は、寅さんシリーズみたいに全国を巡ろうと思ったのですが、残念ながら、僕らの後ろには松竹さんがいなかったということで(笑)、三部作ということで、ひとつ区切りをつけたいと思っています。昨日DVDも出ましたので、機会があったらぜひ観てください。ありがとうございました。」


(開場時刻には、この日を待っていた映画ファンで長蛇の列が)

 続いての表彰が、本年度最も心に残った女優を表彰する最優秀女優賞。
 こちらは、『わが母の記』&『天地明察』&『ツレがうつになりまして。』&『おおかみこどもの雨と雪』で、宮崎あおいさんと、『わが母の記』で樹木希林さんが受賞されました。
 一番華やかな最優秀女優賞ですが、この日は、おふたりともお仕事の都合で来祭ができないということで、代理の方がトロフィーを受け取られ、少し残念でした。
 代わりに、宮崎あおいさんからは、ビデオメッセージが流されました。
 「皆さん、こんにちは。宮崎あおいです。本日は、会場に伺うことが出来ず、とても残念に思っています。すいません。第4回TAMA映画賞最優秀主演女優賞をいただき、本当にありがとうございます。『わが母の記』は、何だか不思議な感じの作品で、テンポも良く、色々なところから家族の声がたくさん飛び交って聴こえてくる感じが、観ていてワクワクしたというか、初めてこういう映画を観たと思いました。監督は、凄く作品にこだわりをもって創っていらっしゃって、細かいところまで観ている方なので、毎日ハードでしたが、凄く楽しかったですし、何より出来上がった作品を観たときに「原田監督は凄い」と思いました。現場は、女性が多かったので、手芸部だねと言いながら、みんなで編み物をしたり、たまにそこに役所さんが入って来られて、でも、女性ばかりなので、たぶんあまり居心地が良くないと言いますか、居場所がなかったみたいで、すぐに外に出られたりしていましたが、温かい現場でした。今後のご予定ですか。そうですね。こうして素晴らしい現場に参加をさせていただいて、一緒に作品を創ることに携われるのは凄く幸せなことだと思うので、皆がひとつになるような瞬間がたくさんある現場に、これからも関わることが出来たら良いなと思います。誠実に、ちゃんと自分のことに向き合って、頑張っていきたいなと思います。」

 また、樹木さんも、だいぶ前から予定を組んで、今日の来祭を楽しみにされていたそうですが、急遽海外でのお仕事が伸びてしまい、どうしても来ることができなくなってしまったということです。代わりにプロデューサーの方がご登壇され、ちょっとしたエピソードを披露します。
 『わが母の記』で樹木さんは、八重という主人公(役所広司さん)のお母さん役で味のある演技を魅せてくれていますが、元々は違う役でオファーがあり、一度、出演を断られていたそうです。
 「その後、原田監督と色々話し合う中で、今回の役を配役されて、ご出演いただけたことは、とてもラッキーなことで、その幸運のおかげでこの映画が完成しました。あらためて、この場を借りて樹木さんには感謝を申し上げたい。そして、この作品に関わったキャスト、スタッフ、今日、作品をご覧いただいた皆さまに感謝を申し上げたいと思います、ありがとうございました。」とエピソードを語るプロデューサー。



 そして、本年度最も心に残った男優を表彰する最優秀男優賞は、『わが母の記』&『キツツキと雨』&『聯合艦隊司令長官 山本五十六』で役所広司さんが受賞。奇しくも、最優秀女優賞のおふたりと最優秀男優賞の受賞者が全員『わが母の記』からの選出となりました。

 受賞コメントを促されて、「ありがとうございます。受賞のコメントを『サイタマノラッパー』のようにラップに乗せて伝えられれば良いなぁと思いながら、袖で見ていました。」と場内の笑いを誘う役所さん。
 「こういう賞は、めったにもらえないものですし、本当に脚本や監督、スタッフやキャストとの出逢いがあって出来上がるものだと思っていますので、久しぶりにこういう賞をいただけて本当に光栄です。これからも、新人のつもりで1本1本頑張っていきます。どうもありがとうございます。」と言葉を続けます。

 新たな代表作が次々と公開された2012年、「こんなにやるという年はあまりないのですけれども、今年は素晴らしい作品や監督と出逢えて、非常に忙しかったですけれども、素晴らしい1年だったと思っています。」と1年を振り返られます。

 『わが母の記』では、作家の井上靖さんの役を演じられた役所さん。役作りの秘訣について、「スタッフの皆さんが、井上靖先生やお母さんの資料を色々と集めてくれました。それを読むことと、一番役作りにとって大切だったのは、写真が年代別にあったのですけれども、井上靖先生の変化ですとか、お母さんの変化ですとか、そういうものが写真で凄く伝わってくるものがありました。井上靖先生にお孫さんができたころ、急に表情が温和な感じになってきていたのが印象的でした。」と裏話を披露されます。

 今回、最優秀女優賞を受賞した『わが母の記』で共演したふたりについて、まずは母親役の樹木希林さんの印象を聞かれると、「怪女優でしたね。」とひと言。会場は大爆笑に包まれます。
 「でも、本当に樹木希林さんは大先輩ですし、素晴らしい女優さんですから、一緒にシーンを創ることが、非常に楽しかったです。」と言葉を続けます。
 そして、娘役の宮崎あおいさんとは、2001年公開の『EUREKA ユリイカ』以来の共演。
 「本当に、あおいちゃんとは、13歳のときに『EUREKA ユリイカ』という映画で一緒になって、そのときは本当に良い芝居をする才能があるなぁ、と思って見ていたのですが、それ以来となる、今回一緒にお芝居をさせていただいて、本当に素晴らしい魅力的な女優さんになったなぁと感動しました。」と印象を語る役所さん。
 想像どおり成長をされていたということですか、との問いかけに「そうですね。」と即答します。

 三谷幸喜監督の新作時代劇を撮影中という役所さん。作品の内容について「清州会議という原作を三谷幸喜さんが書かれまして、それを映画化したものです。その中で、柴田勝家という、歴史上では、そんなにスター性のない人物ですけれども、その役を演じています。」
 ということで、今後の抱負と予定を聞かれて、「今後の予定は、(『キツツキと雨』の)沖田さんがこの後は用事があるようなので、今日はまっすぐ家に帰ります。」と茶目っ気たっぷりに司会者との掛け合いを楽しむ役所さん。
 出演予定をお願いしますとのツッコミを受けて、「いま三谷監督の映画を撮影していますが、本当に若くて個性的な素晴らしい監督がたくさん出てきていますし、日本映画も興行的には大成功しています。その中でも、渋めの映画もどうぞ皆さん観に来ていただいて応援してください。僕たちも頑張っていきます。どうぞよろしくお願いします。」と映画界の大先輩らしく、映画愛にあふれた素敵な言葉で締めくくられます。


 そして-

 蓮佛美沙子さん、白百合女子大学ご卒業、おめでとうございます☆

 4年間、学業と女優業の両立は、楽しい想い出とともに、苦しいときもたくさんあったことでしょう。
 本当に、よく頑張ったね!

 明日から、また新たなステージに立つ蓮ちゃん。
 これからは、たくさんスクリーンで出逢えるようになるかな。
 楽しみにしています♪


(りょう)

つづく  


2013年03月15日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記④

 最優秀新進女優賞は、『桐島、部活やめるってよ』&『Another』&『HOME 愛しの座敷わらし』&『貞子3D』などで橋本愛さん。そして『苦役列車』で前田敦子さんのふたりが受賞されました。この最優秀新進女優賞は、本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした新人女優に贈られる賞です。
 橋本愛さんは、昨年は何と8本(!)もの公開作品に出演。充実した1年となりました。受賞対象作品以外には、『スープ~生まれ変わりの物語』&『ツナグ』&『BUNGO~ささやかな欲望・「鮨」』&『劇場版BLOOD-C The Last Dark』(声のみの出演)があります。

 名前を紹介されて上下黒系でコーディネートされた服装で登壇された橋本愛さん、「10代ならではの透明感、苛立ち、戸惑い、不敵さを、時にひらりとした軽さで、時に物語の核となる重さで、青春映画からホラー映画まで見事に演じ分けました。第4回TAMA映画賞において、本年度最も飛躍し、活力あふれる活躍をした女優として、ここに表彰いたします。」と読み上げられた表彰状を受け取られます。
 花束の贈呈では、多摩市を象徴するご当地ゆるキャラ…ではなく、キティちゃんが登場するサプライズも。(多摩市には、サンリオピューロランドがあるのですね)。
 可愛らしいキティちゃんから花束を受け取る橋本さん。

 マイクの前に立ち、「ありがとうございます。今日は、凄く素直に嬉しい気持ちでいっぱいですし…、あの……、はい、嬉しいです。」
 この後、数多くの映画賞で新人賞を受賞することとなる橋本愛さんですが、このTAMA映画賞が、これから始まる長い橋本愛さん伝説の記念すべき出発点。初めての授賞式への出席ということで、少し緊張されている様子。

 橋本さんは、昨年は8つもの作品に出演をされたという大ブレイクの年となりましたが、その中でも、『桐島、部活やめるってよ』は、特別の想い出がある作品と聞いています、と司会者から投げかけられて-
 「そうですね。私は、この仕事が全然好きではなくて。」
と、橋本さんから意外な発言が飛び出し、場内がざわめきます。
 「面倒くさがってやっていた時期があって、でも、そんな時期に、この作品と作品を通じて現場にいた方々に出逢えたことで、やっとこの仕事が好きになれて、やっと家族に届ける以外に、この仕事をやる意味を自分の中に見つけられて、だから、やっとお芝居を愛せたので、凄く宝物です。」と作品への感謝を、独特の言葉で表現します。

 自分を変えてくれた作品ということになりますか、という質問に「はい。」と答える橋本さん。
 想定外の回答と展開に、その後の進行に困ってしまい、「会場の皆さんで、まだ映画を観ていない方がいらっしゃいましたら、橋本愛さんの人生観までを変えてしまった作品ですので、ぜひ観てください。」と締めくくる司会者に、場内からは、笑いが起こります。

 客席から「愛ちゃん、しゃべるの頑張れ!」との声援を受け「ありがとうございます。凄く嬉しくて、何もしゃべれない…」と呟きながら、「やっと愛せたこの作品を、これからも自分の中でも凄く大切にしていきたいし、この大事なものとできるだけずっと長く繋がれていられるように、自分なりに頑張っていこうと思っているので、これからもよろしくお願いします。」と一所懸命に言葉を紡ぎます。


(タワーレコード新宿店では、「桐島、日本アカデミー賞3冠受賞だってよ」と題して、3月17日まで、衣装・小道具・パネル展が開催されています。)


(劇中キーアイテムとなる、あの8ミリカメラも。)

 映画祭公式パンフレットにも各受賞者のコメントが掲載されており、橋本愛さんは、「高知の生きている学校で1か月、青春を謳歌した私たちの切り取られた日々が、観てくれた方々の一部となって、時には意図を超えた部分で増殖した、一種の“現象”と呼べるものさえを目で耳で肌で感じることができた、大切な作品です。本当に一生大切です。改心する機会をくれた役者のみんなを背負って賞をいただけること、本当に有難く、とても嬉しい気持ちです。これを褒美だと思わず、追風に変えてこれから向上していきたいです。本当にありがとうございました。」とこちらも独特の言葉(ファンの間では“橋本節”と呼ばれている?)で喜びを表現されていました。

(TAMA映画賞での橋本愛さんの様子は、橋本愛さんの公式サイトの中で、写真付きで紹介されています。)

 そして、もう一人の新進女優賞は、『苦役列車』で元AKB48の前田敦子さん。

 『苦役列車』の予告編がスクリーンに流され、名前を呼ばれて舞台上に登壇すると、会場内からは、この日一番の大きな声援が。「あっちゃん!」という大声援が万雷の拍手と共に贈られます。
 「単なるミューズではなく、生活の実感や煩悶、不安を抱え、80年代の空気感を身にまとった演技に、今後息の長い女優として活躍する大きな可能性を感じさせてくれました。第4回TAMA映画賞において、本年度最も飛躍し、活力あふれる活躍をした女優として、ここに表彰します。」と読み上げられた表彰状を受け取られます。

 司会者からコメントを促され、「最優秀新進女優賞という、とっても素敵な賞をいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。この映画祭は、市民の方々のボランティアで行われていると聞きました。そして、20年間も続いているという、そんな愛のある素敵な映画祭で、こんな素敵な賞をいただけて、本当に嬉しいです。皆さん、ありがとうございます。そして、『苦役列車』の山下監督、スタッフの方々、『苦役列車』を愛してくださった皆さんに感謝しています。ありがとうございます。」と、さすがあの大所帯で個性派揃いのAKB48で、長年センターを張っていただけあって、とても落ち着いたしっかりとした口調で、来場者と映画祭スタッフに感謝のメッセージを届けます。

 前田敦子さんは、以前から山下敦弘監督の大ファンだったそう。そんな憧れの山下監督に初めて会った際には、想わず「うわっ、本物だ」と言ってしまい、監督をびっくりさせてしまったそうです。
 実際に山下監督から演技指導を受けた感想を聞かれ、「現場ではずっと、私は山下ワールドと言っているのですが、本当に山下ワールドが広がっていて、これが、この世界観なんだなと、凄く興奮しつつ、自分を高めつつ、参加することができました。」と話す前田さん。
 元々、映画を鑑賞することが、凄く大好きだったということで、完成した自分が出演している作品を観たときの印象については、「今回、自分が出演しているとか、そういうのではなく、それは別として作品を観たときに、「あっ、映画を観ているな」という気分に凄くなりました。」とご自身の出演作についての感想を語ります。

 2012年8月27日にAKB48を退団し、ずっと憧れていたという女優への道を本格的に歩み始めた前田さん。今後チャレンジをしてみたい役柄を聞かれて、「そうですね。求めていただけたのなら、大概のことにはチャレンジをしていきたいと思うのですが、やはり、こうして観てくださっている方の印象に残るような役をやっていきたいです。」と、しっかり前を向きながら、言葉を紡ぐ前田さん。

 最後に、抱負とご予定をお伺いできますか、との司会者の言葉に、「ご予定?」と聞き返す前田さん。どうやら結婚のご予定を聞かれたのと間違えたよう(笑)。ちょっと素がでた前田さんです。この後、司会者が各受賞者に「ご予定は?」と聞くたびに、会場がクスッと反応するようになりました。
 ご出演予定などはございますでしょうかと聞き直されて、「そうですね。ごめんなさい。これからも、愛される映画にたくさん出演していきたいなと思っています。来年公開予定の映画もあります。ぜひよろしくお願いします。これからも頑張ります。本当にありがとうございました。」と締めくくる前田さん。劇場では既に予告編が流されていますが、今年は5月18日に主演作品の『クロユリ団地』が公開予定です。

 余談ですが、りょうとAKB48との初めての出逢いは、女優・大島優子さん。
 2009年『水曜どうでしょう!』のミスターこと鈴井貴之さんがメガホンをとられた映画『銀色の雨』で、良い演技をする若手女優さんだなぁと思い、パンフレットを手に取りプロフィール欄を見ると、大島優子(AKB48)…って何?というのがきっかけでした。
 新曲『So long!』The Movieでのまゆゆこと渡辺麻友さんも、大林宣彦監督のタクトで素敵な演技を魅せてくれていましたが、前田敦子さんや大島優子さんなど、才能のある人たちが映画界という新たなステージに飛び込んでくれるのは、楽しみが広がりますね。

(りょう)

つづく  


2013年03月14日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記③

 続いての最優秀新進男優賞には、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で満島真之介さんと、『桐島、部活やめるってよ』及び『SPEC 天』で神木隆之介さんが受賞されました。
 受賞作品となった『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』の若松孝二監督は、昨年、不慮の事故で急逝されています。
 挨拶に立った満島真之介さんは、「皆さん、今日はありがとうございます。僕は、お芝居の勉強を全くしたことがなかったし、何も分からないときに、若松監督からこんな大きな役をいただきました。カメラの前で、自分がどう立てば良いのかということも、監督に色々と教えてもらいながら、ときには罵倒されてたこともありましたが、とても愛のある現場と、愛のある監督のもと、あんなに背中の大きな大人に逢ったのは、僕自身、父親以来だったので、今日の受賞は、色々な想いを持ってここに来ました。ありがとうございます。」と若松監督への想いを述べられます。
 満島さんにとって若松監督の存在は、「父親よりももっと大きなと言いますか、何か人間の素敵な心と言いますか、男として、本当にこの人についていきたいなと想ったのは、僕自身初めての経験」だったそうです。
 そして、満島真之介さんのお姉さんである満島ひかりさんは、第1回のTAMA映画賞で、最優秀新進女優賞を受賞されています。この日の受賞については、お姉さんのひかりさんにも伝えられたそうで、とても喜んでくれたそうです。「姉自身も、一番最初にいただいた映画賞が、このTAMA映画賞だったので、家族全員で喜びました。いつもありがとうございます、という感じですね。」と、笑いをとる満島真之介さん。
 「今回は、僕が個人の賞をいただいたのですが、この受賞をきっかけに、もっともっとこの映画が、若松監督のパワーが、そして、若者のパワーというものが、世界中に広がっていってくれたら良いなと思っています。」と力強く語る満島真之介さん。若松監督に厳しく育てられただけに、立ち姿もキリッとしていて、ひとつひとつの立ち居振る舞いや言葉が、劇中の昭和の時代そのままの男らしさにあふれていました。


(パルテノン多摩大ホールの授賞式会場)

 そして、『桐島、部活やめるってよ』と『SPEC 天』で受賞となった神木隆之介さん。
 まずは、「このような素晴らしい賞を受賞させていただいて、本当に光栄に思います。そして、これからももっともっと精進して頑張りたいなと思います。本当にありがとうございます。」とひと言挨拶を述べられます。
 神木さんは、子役時代から活躍をされていて、既に長い芸歴がありますが(2006年に日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞)、今回、最優秀新進男優賞に選出されたことについて聞かれ、「素直に凄く嬉しかったですね。これからは、子役ではなくて、大人の役者の一人として、もっと深く色々なことを経験して、もっともっとお芝居の幅が広がるように、人生を勉強して生きていきたいなと思っています。」と、大人の俳優として認められたことを嬉しそうに話す神木さん。
 『桐島、部活やめるってよ』は、高知の学校で同世代の俳優が長期間生活を共にしながらロケが行われた作品です。ロケ当時の現場の雰囲気を聞かれて、「雰囲気は部活の様な感じでしたね。高知県で、合宿状態で、同い年から4歳違いぐらいの皆さんで一緒に撮影をしたのですが、やはり一人一人が、自分の演じる役に信念を持っていて、それが、皆でぶつかりあったり理解しあいながら、芝居の中で良い切磋琢磨ができました。呼吸が合うまで撮影をさせていただいて、合宿状態でやるというのは初めてだったので、本当に自分でも成長ができた作品でしたし、本当に一緒に共演した皆さんには感謝をしています。」と神木さん。
 最後に今後の抱負について「これから、もっともっと深みのある俳優として、ただ、それが出るためには、人間がきちんとしていなくてはいけないし、人間自体に深みが出ていなくてはいけないと思うので、もっともっと精進をして研究をして、皆さまにたくさんのメッセージをお届けできたら良いなと思っています。今日は本当にありがとうございました。」としめくくられる神木さん。落ち着いた話しぶりからも、『桐島』の撮影現場では、まさに部長ならぬ学級委員長として(笑)、キャストの皆さんから絶大なる信頼を寄せられていたことが分かります。

(りょう)

つづく  


2013年03月13日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記②

 東日本大震災から2年目を迎えた昨日、俳優の皆さんが、ブログ上でそれぞれのメッセージを寄せられていましたね。
 いくつかをご紹介すると-

 ○ 仲里依紗さん『B型革命
 ○ 桐谷美玲さん『ブログさん
 ○ 土屋太鳳さん『たおのSparking day
 ○ 貫地谷しほりさん『しほりのおしゃべり工房
 ○ 大島優子さん『ゆうらりゆうこ
 ○ 演劇集団キャラメルボックス加藤昌史さん『加藤の今日

 さて、話しはTAMA映画賞に戻ります。15時50分から始まったTAMA映画賞の授賞式典は、各賞ごとに受賞対象となった作品の予告編がまずスクリーンに上映された後、司会者から受賞者の名前が紹介され、一人ひとりステージ中央に登壇されます。
 ステージ上では、受賞理由が記された表彰状が読み上げられ、花束と地元・多摩焼きで作製された茶色の陶器製の人型トロフィー(米アカデミー賞風?)がそれぞれ贈呈されます。

 今回のTAMA映画賞では、転校生日記に関連のある人たちが数多く受賞されました。『転校生~さよならあなた』の大林宣彦監督を初め、娘の千茱萸さんが審査員を務める上田映画祭の自主制作映画コンテストで第1回目に大賞を受賞した入江悠監督。『この空の花~長岡花火物語』と同じく長岡発映画となる『聯合艦隊司令長官 山本五十六』に主演をされた役所広司さん。大林宣彦監督の『あの、夏の日~とんでろ、じいちゃん』が銀幕デビュー作となった宮崎あおいさん。『BUNGO~ささやかな欲望・鮨』に主演された橋本愛さん、など-



 それでは、各賞受賞者の紹介と併せて喜びのコメントを簡単にご紹介していきたいと思います。授賞理由などについては、映画祭公式ホームページをご覧ください。

 最優秀新進監督賞を受賞したのは、『キツツキと雨』の沖田修一監督と『かぞくのくに』のヤン・ヨンヒ監督のおふたり。

 『キツツキと雨』は、役所広司さんが演じるキコリと小栗旬さん演じる新人映画監督が、映画製作の現場を通じての交流を画いた作品。エキストラとして、何度か映画製作の現場を経験したことのあるりょうにとっては、映画を観ながら「そうそう」と、自身の体験にも重ねて、とても興味深かった作品です。

 挨拶に立った沖田修一監督、「皆さん、今日はありがとうございます。『キツツキと雨』は、1から皆で考えて、1から皆で撮ってきた映画で、皆に助けられながらの撮影でしたが、本当に思い入れのある作品で、そのような作品でこうした賞をいただけるのは、嬉しく思っています。本当にありがとうございます。」と挨拶を述べられました。
 この作品は、小栗さんが演じる新人映画監督の苦悩と成長が画かれている作品ということで、劇中の監督像には、自身の体験が投影されているのですか、という質問には、「初めは、そのようなつもりはなかったが、小栗さんが撮影中の現場での自分の姿を上手に掴んでいただいて、段々と重なる部分も出てきたのかなと思います。」と話をされます。
 この日は、『キツツキと雨』に主演した役所広司さんも最優秀男優賞を受賞し、来祭されているということで、舞台上に登壇されます。
 役所さんから見た現場での監督について聞かれ「的確な演出と、監督としての想いを持っていて、しっかりとした日本映画を撮ってくれる監督」と印象を述べられるとともに、「実は、東京国際映画祭のとき、新しい映画祭用のジャケットをせっかく買ったのに、最寄駅まで行く自転車の籠に忘れてきてしまった」というお茶目なエピソードが披露されます。
 そんな役所さんからの言葉に、「本当に、このような感じで役所さんにはフォローをしていただきながら、現場の撮影を進めて行けたので良かったです。」と沖田監督。
 そして、この映画で一番印象的なのは、役所さん演じるきこりのゾンビ姿。
 役所さんにゾンビ役をお願いするとき、抵抗感はなかったのかを聞かれて、「抵抗は全くなくて、期待しかなかった。メイクをされている最中から、見たくて見たくて仕方がなかったし、出来上がった感じも、凄く楽しかった。」と沖田監督。役所さんも、ゾンビ役のオファーを聞いたとき、とても楽しみだったそうです。
 まだこのような授賞式には慣れていないのか、司会者とのやり取りでは、正面のマイクを使わずに、思わず横を向いて司会者と話をしてしまいそうになる初々しい沖田監督。「これからも、この賞に恥ずかしくないように頑張っていきます」という沖田監督は、現在、吉高由里子さん&高良健吾さん主演の映画『横道世之介』が全国公開中です。

 そして、『かぞくのくに』のヤン・ヨンヒ監督。
 この日、ヤン監督は、エストニアでの映画祭に本作品を持って参加中とのことで、代理としてプロデューサーの方が出席され、監督からのお手紙が代読されました。

 「10代、20代の頃、映画と演劇に夢中だった私に、父は、韓国、朝鮮人が日本で芸術家を目指しても、所詮、相手にされることはない。出自を隠して、何の意味があるんだ、と言いました。やってみなければ分からない、と反発し、自身の表現を模索してきた私が、やがて新聞や雑誌で紹介される度に、父がその号を買い占め、母が記事を切り取っていたと後で聞かされました。当時を思うと、在日を取り巻く時代の変化を痛感します。『かぞくのくに』というプロジェクトを立ち上げたスタッフ、3・11以降も決して揺るがなかった撮影スケジュールに全力で参加してくださったキャストの皆さんの熱い想いに今でも心が震えます。いま、映画に手を引かれるように、世界中を私は巡りながら、映画は政治や国境を越えて、人々の心を繋ぐと実感しています。監督としてやっとスタートラインに立ったにすぎませんが、自分の想いを表現できる環境に、幸せを噛み締めながら、これからも魂を込めて作品を創っていきたいと想っています。大きな叱咤激励をありがとうございます。」とメッセージが読み上げられました。
 この『かぞくのくに』は、ヤン監督自身の家族の逸話に基づいて製作された、監督初の劇映画作品です。ヤン監督は、同じくご自身の家族を撮ったドキュメンタリー作品を発表したことにより、この映画のモデルとなったご家族と会うことを、いまだに国から許されていないそうです。

(りょう)

つづく  


2013年03月12日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記

 2011年3月11日の東日本大震災から、今日でちょうど2年を迎えました。
 仏教でいう三回忌にあたる本日、東日本大震災で犠牲となられた御霊たちに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 映画界でも、心のスクリーンが真っ白になった2011年3月から、文化・芸術の力で人々の心の復興を支援し、また芸術のジャーナリズム性を通じて、震災の記憶を未来に伝えようと、この間、様々な作品が制作・公開されてきました。
 先日、震災直後の岩手県釜石市を舞台にした映画『遺体~明日への十日間』を鑑賞しましたが、昨年の転校生日記でレポートを寄せたように、被災地支援で震災後の釜石市に派遣された自分としては、劇映画を観ながら、当時の街の様子や釜石で出逢った皆さんのことが目に浮かびました。
 劇中ラストの被災者の「ありがとう」という言葉に、自分が避難所の去り際、ご自身の方が辛いはずにもかかわらず「ありがとう」と言葉をかけてくれたお婆ちゃんの姿と重なり、涙が止まりませんでした。
 被災地復興は、まだまだ道半ばです。
 大林宣彦監督の『この空の花~長岡花火物語』も震災復興へのエールを込めた作品のひとつ。
 「それぞれが違うことを思ったり、違う考えを持っている。お互いを尊重し、助け合いが大事。助け合いの精神がないと滅びる。賢い、美しい人間になれー」(AKB48『So long!』よりー)
 震災直後、多くの日本人の心に灯ったこの気持ちを消さずに、これからも被災地に想いを届け続けられればと思います。


(2011年、釜石にて)

 そして、先日、日本アカデミー賞の各最優秀賞が発表されましたね。
 最優秀作品賞は、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』が受賞。
 『桐島、部活やめるってよ』は、TAMA映画賞 → ヨコハマ映画祭と、ファンが選ぶ各映画賞をステップアップしていき、遂には日本映画界の最高峰まで登りつめました。
 決して興行成績的には恵まれたとは言えない小規模な作品の選出は、日本アカデミー賞の良心、そして“現象”と称されるソーシャルメディアを駆使した口コミでの伝播という日本映画界の新たな時代の幕開けと受けとめました。
 主演の橋本愛さんの号泣と東出昌大さんの男泣き、そして、その後の壇上での皆さんの晴れやかな笑顔が、とても印象に残ったステキな授賞式でした♪


(第36回日本アカデミー賞授賞式会場)

 日本アカデミー賞授賞式については、橋本愛さんがご自身のブログ『AI HASHIMOTO』に想いを綴られています。

 吉田大八監督、橋本愛さん、東出昌大さん、そして『桐島』スタッフ&キャストの皆さま、心からおめでとうございます!




(『桐島、部活やめるってよ』は、3月15日(金)まで、長野松竹相生座・ロキシーさんでアンコール上映中。DVDも既に発売されていますが、貴重なこの機会に、ぜひ劇場の大きなスクリーンで桐島ワールドを体験してくださいね。アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品にもかかわらず、入場料は1,000円(!)。これはお得です。)

 さて、本日からの転校生日記では、2012年の日本映画界をふり返る映画ファンの手による3つの映画賞(TAMA映画賞&ヨコハマ映画祭&キネマ旬報ベスト・テン)の表彰式レポートを皆さまにお届けしたいと思います。

 その第1回目は、昨年11月、8日間にわたり、東京都多摩市で開催された第22回TAMAシネマフォーラムを紹介します。
 転校生日記でも既報のとおり、同映画祭の第4回TAMA映画賞において、大林宣彦監督作品『この空の花~長岡花火物語』が最優秀作品賞に選定され、同映画に関わったスタッフ・キャストの皆さんに対して、賞が贈られました。11月23日にパルテノン多摩大ホールで開催された授賞式典には、大林宣彦監督を始め、奥様でプロデューサーの恭子さんや娘さんの千茱萸さんと御一家で来祭され、大林宣彦監督がスタッフを代表して授与式に登壇されました。式典前の会場ロビーでは、恭子さんにお会いでき、お祝いの言葉を直接お伝えすることもできました。奇しくも11月23日は、りょうの誕生日。自身もエキストラとして関わった作品の受賞に、めでたくも幸福感に包まれた誕生日となりました。
 TAMA映画賞で最優秀作品賞を受賞した『この空の花~長岡花火物語』、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』、最優秀新進女優賞を受賞された橋本愛さん、最優秀新進監督賞を受賞されたヤン・ヨンヒ監督は、先日開催されたヨコハマ映画祭でも、それぞれ賞を受賞されていましたね。

(受賞者の一覧は、映画祭公式ホームページから)

 TAMA映画賞は、「明日への元気を与えてくれる・夢を見させてくれる活気あふれる“いきのいい”作品・監督・俳優を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰します。」をテーマに毎年選考が行われる映画賞で、またTAMAシネマフォーラム自体は、今年で22年目を迎える老舗の映画祭です。
 授賞式が行われるこの日は、最優秀男優賞(役所広司さん)と最優秀女優賞(樹木希林さん・宮崎あおいさん)を受賞した『わが母の記』と最優秀作品賞と最優秀新進男優賞(神木隆之介さん)、最優秀新進女優賞(橋本愛さん)を受賞した『桐島、部活やめるってよ』、そして、最優秀作品賞(大林宣彦監督)を受賞した『この空の花~長岡花火物語』と各賞を受賞した3作品の上映も併せて行われ、500人の収容力を誇るパルテノン多摩大ホールを埋め尽くした多くの映画を愛する人たちにとっては、良質の映画にまとめて出逢える至極の1日となりました。


 (この日は雨が降るお天気にも関わらず、りょうが到着した午前8時には、最優秀新進女優賞を受賞された元AKB48の前田敦子さんのファンの方でしょうか、既に熱心なファンが列を作っていました。)

(りょう)

つづく  


2013年03月11日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ

『BUNGO~ささやかな欲望』 in 伊参スタジオ映画祭⑤

 松岡「もう一つだけ、映画の話をしますと、第二次世界大戦のちょっと前、日中戦争が始まって最中にある夫婦を画いた訳なので、今の夫婦像というか、愛情表現の仕方も、また違ってくるとは思うのだけれども、なかなかああいう形で役をやるということは、おふたりは以前にもやられたことはあるかもしれませんけれども、多分、今までそれほど経験したことがない役柄だったんじゃないかなと思うのだけれども、ああいう夫婦愛みたいなものや、自分が誰かを好きになって許したり、強くなって乗り越えていく、みたいなことは、理解できるものなのですか。」

 波瑠「うーん。理解はできているのだと思います。」

 松岡「自分だったらどうということはありますか。」

 波瑠「うーん。どうなんだろう。ただ、前に監督とお話しをしたのですけれども、今の時代は、ゴールが結婚じゃないですか。でも、この二人の関係は、お見合いをして、結婚からスタートしている。やっぱり、全然、時代背景というか、そういうもので変わるものなんだなっていうことに、凄くびっくりしました。何か今との違いを気付かされた感じです。」

 結婚とお見合いの違いの話は、以前この日記でもレポートさせていただいた丸善書店さんでの公開直前トークイベントでのことですね。

 松岡「なるほど。仮に、あのように旦那さんが告白して来たら、波瑠ちゃんはどうしますか。絹子はああいう行動をしましたが。」

 波瑠「もし、私が結婚をして、「子供がいるんだ」って言われたら、ですよね。」

 松岡「時代背景にもよるかもしれないけれども。」

 波瑠「そうですよね。」

 松岡「現在の波瑠ちゃんだったら、どうしようと思いますか。」

 波瑠「どうするんですかね。」

 松岡「どうしますか。」

 波瑠「どうしますか。あはは。どうしましょう。」

 三浦「先に言えよって感じですよね。」

 波瑠「本当にそうですよね。」

 松岡「そりゃそうだよね。」

 谷口「その実感は、僕も分からないけれども、撮る方としては、ただ何か昔の人って、今も話があったように、何かこう、凄く自分にとっては痛い辛いことだと分かっていても、それを全部受け入れる大きさというか深さがあって、それが絹子という女性の強さだなと思って。」

 松岡「三浦君が今まさに言ったけれども、普通に考えたら、「先に言えよ」というか、なぜ俺は言わなかったまま結婚したんだろうって、やっぱりなっちゃうじゃないですか。」

 三浦「いや。いまの時代だったらそうですけれども、あの時代はやっぱり、そんなに付き合い方が今みたいに恋愛結婚が普通ではないので、お見合いをして、結婚するという中で、なかなか、その告白する機会も少ないと思うのです。今だったら、恋愛して結婚するのだから、「恋愛している途中で言えよ」というようなことになりますが。」

 松岡「なるほどね。それが、さっきと同じで、分からなかったから、そこから色々なことが生まれて、色々と出来てくるということですね。」

 谷口「後は、戦争というものがあって、人の死とか、理不尽に人が引き裂かれたり、色々な辛いことを抱えている人が、多分いっぱいいた時代のときに、不幸というものの捉え方が、今の僕らとは全然違ったことがたくさんあったのかなということは想像したのですが。」

 松岡「そうだよね。良いことか悪いことかは置いておいて、別れということが今よりももっともっと多い時代だったから、そこの中で、人は悲しむだけじゃない、成長していくということが、全般的に、林芙美子さんの原作は、それを描いているなという気はしますね。そんな強い昭和の夫婦を、こんな若いふたりが演じてくれてね。」

 谷口「良くこのふたりが引き受けてくれたなと思っています。」

 松岡「本当にそうだよね。ありがとうございました。」

 波瑠「こちらこそ、ありがとうございます。」
 「ふふふっ。」と照れ笑いをしながら、感謝の言葉を返す波瑠さん。


(体育館内に置かれた映写機)

 松岡「お時間ということで、ここら辺で終わりにしたいと思いますが、せっかくなので、今なさっている活動ですとか、これからやる作品などがありましたら、告知などどうぞ。」

 波瑠「良いですか。」

 松岡「どうぞ。」

 波瑠「来年、年明けになってしまうのですが、NHKのドラマ『書店員ミチルの身の上話』という連続ドラマに出演します。ぜひ観てください。」

 松岡「どんな役なのですか。」

 波瑠「主人公の妹なのですけれども。」

 谷口「佐藤正午さんという方が書いた面白い小説でね。お姉ちゃん役が、戸田恵梨香さんですよね。」

 「書店員ミチルの身の上話」は、NHK総合テレビジョン「よる★ドラ」枠として、現在、毎週火曜日22時55分か23時24分の時間帯に放送されています。(放送は3月12日まで)。同番組には、大林組の寺島咲さんも出演されています。

 松岡「三浦君は、何かありますか。」

 三浦「僕は、あんまないんです。一応、来年公開する映画が何本かあるので、ちょっとパッと出てこないのですけれども、Web等でぜひ見つけてください(笑)。」

 谷口「結構話題作にも出ていますから。ついこの間も『あなたへ』という、あれは素晴らしい映画で、三浦くんも素晴らしかったですね。」

 松岡「本当に、もの凄く未来のある、ふたりとも素晴らしい俳優さんなので、皆さんぜひこれからもふたりを応援してあげてください。そして、我々もスタッフとして頑張りますので、僕らも、引き続きちょっとだけ応援していただければありがたく思います。今日は、皆さんどうもありがとうございました。」


(今年は雨が降る中の開催となった伊参スタジオ映画祭)

 ここまでご紹介してきたトークイベントの内容のとおり、小規模な作品ながら、若くして才能のある波瑠さんや三浦貴大さんと谷口監督をはじめとするスタッフたちが、原作と真摯に向き合って丁寧に創り上げた『BUNGO~ささやかな欲望・幸福の彼方』。
 転校生日記での連載ををご覧になって、作品の中身が気になった方は、ぜひ現在発売中のDVDでチェックしてみてくださいね。

 対談が終了した後は、伊参スタジオ映画祭恒例のゲストと観客が一堂に会しての集合写真撮影となります。子供のころの遠足ではありませんが、撮った写真は、会場内で購入することができるので、皆さん良い想い出となるでしょう。
 その後は、引き続きゲストによるサイン会に。特に机などで場が仕切られていないので、普段はスクリーンの中にいる人たちに、この日だけは直接ふれ合うことができます。想い想いにサインを書いてもらったり、握手を交わしたり、応援のメッセージを伝える来場者の皆さんの顔には、幸せな笑顔があふれていました。これも“映画の力”ですね。

 みなさん、2013年も伊参で逢いましょう!

(りょう)  


2013年03月01日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ