長岡百花繚乱の紀~『うえだ城下町映画祭・親子トーク』④

 続けて、話題は、“映画のまち”上田の魅力について。
 「上田でロケをしている作品はたくさんあるのですが、監督にとって、上田のまちの魅力というのは、どういうところにあるのでしょうか。」と聞かれた大林監督は、

長岡百花繚乱の紀~『うえだ城下町映画祭・親子トーク』④
(上田では、『淀川長治物語・神戸篇 サイナラ』、『告別』、『理由』、『転校生~さよならあなた』を撮られている大林監督)

 「ここは映画のまちですね。今日は市長さんもいらしている。ここに大女優さんが来るというのならば別ですが、映画館も色々ある中で、しかも、このような自主制作映画の無名な人たちの作品をやる場所に、市長さんが座っているというのは、とんでもないことで、これが映画のまちなのです。つまり、市長さんは市民が選んだ方なので、市民が一体化して、こういう映画を育てていこう、と。フィルムコミッションというものが全国にあって、どこも、お金を持ったスターがたくさん出ている映画を呼んで、ちょっとうちにもお金を落としてもらいたい、ということで呼ぶのですが、上田は昔からロケが多い所で、フィルムコミッションなんか作る必要がないところですよね。でも、フィルムコミッションを作ったと市長さんがおっしゃるので、「上田でフィルムコミッションはいらないでしょう」と言ったら、市長さんがおっしゃいましたね。内緒話をしても良いですか、「フィルムコミッションにしたことで、古いものを壊さないということができるのです。上田も、僕たち古い映画人にとって良いものがたくさんあったのだけれども、やはり時代の中で、古いものは不便だし汚らしいから壊していこうという、日本全体の文明化の流れの中で、それに対して、フィルムコミッションにしたことで古いものが護れるのですよ」と。ああ、映画の里の市長さんだな、と。フィルムコミッションが、素晴らしい志を持っている。映画と言うのは、志を持っていないと生まれないですから、だからこそ、職員さんが出迎えてもくれない、こういう素晴らしい映画祭があるのですね。この間、火事になった浦里小学校も、全国の多くの映画人から愛されて、私もあそこで2度、3度とロケをさせていただき、想い入れのあるところなのですが、あのような古い学校を残して、しかも、現役でしょう。これが映画なのです。古いものを残して、骨董品として愛でるのではない。古くはないのですね。あれは、新しいのです。」

 と、話は、昨年9月に焼失した浦里小学校に-

長岡百花繚乱の紀~『うえだ城下町映画祭・親子トーク』④

 「子供たちがそこで授業を受けたり、廊下を雑巾がけしたりと、きちんとやっていました。」と司会者。

 「私もロケに行って、「ここは夏は暑いし、冬は寒いのではないですか」と聞いたら、先生が、「子ども達にとって一番大事なのは、夏の暑さでしっかり汗をかく。冬の寒さであかぎれやしもやけができる。そういうことを体験することが、丈夫な子供を育てるので、学校にとって一番必要なことです。」と。これには恐れ入りました。映画の志ですよ。映画は、そういうものを画く文化だから、そういう人間の素晴らしい賢い生き方をちゃんと護ろうと。それを、便利で快適で、暑さも寒さもないところで過ごす方が、楽で良いやというのは、僕の様な老人になってからの話で、でも、僕はベテランの子供だから、そう思わないですからね (笑)。いまでも暑さも寒さも大丈夫。子供は、暑さ寒さが大好きだから、しかも、そこから学ぶことがたくさんあるのだから、そういう意味で、上田は、志自体が映画のまちなのです。上田のまちの様な映画を創れば、映画もまた志のある素晴らしい映画になると、若い人たちには思ってほしいですね。」

長岡百花繚乱の紀~『うえだ城下町映画祭・親子トーク』④
(会場には、これまでの上田ロケと浦里小学校を紹介した展示会場も。パネルには、「2001年に信州上田フィルムコミッションが設立される2年前、99年に上田市の企画課から「信州上田ロケ地ガイド」という冊子が発行された。それが、映像製作関係者に送付された3日後、さっそく上田にやって来たロケ隊があった。大林宣彦監督の一行である。その時の作品が、今回の映画祭でも上映される2000年の『淀川長治物語・神戸篇 サイナラ』だった。その後、2001年の『告白』、2004年の『理由』、2007年の『転校生~さよならあなた』と、大林作品のロケ地として上田が登場することとなる。そして、『淀川長治物語・神戸篇 サイナラ』、『告白』、『理由』の3本に使われていたのが、この9月5日深夜の火災で本校舎と北校舎が消失してしまった浦野の浦里小学校だった。浦里小学校は、『宮沢賢治 その愛』他の神山征二郎監督作品や、最近では『ゼロの焦点』、『私は貝になりたい』などの話題作、テレビドラマでは『南極大陸』と、昔からさまざまな映画やドラマに使われて来た。そこで学んでいた児童や卒業生、校舎を誇りにしていた地域の人びとにとっては勿論大きな悲しい出来事だったが、大林監督がNHKのインタビューの中で「あれは新しくセットを建ててつくれるものじゃないんです」と答えているとおり、日本の映像関係者たちにとっても貴重な財産がひとつ失われてしまったという喪失感は大きなものがあるだろう。ロケ地としての風景や建築物は、意識して守っていかなければ、たちまち失われていくものであることを、心にとめておかなければならないだろう。」と書かれていました。)

(りょう)

つづく


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2013年01月18日 Posted byひがしざわ  at 08:00 │Comments(0)未来に紡ぐ

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