映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記②

 東日本大震災から2年目を迎えた昨日、俳優の皆さんが、ブログ上でそれぞれのメッセージを寄せられていましたね。
 いくつかをご紹介すると-

 ○ 仲里依紗さん『B型革命
 ○ 桐谷美玲さん『ブログさん
 ○ 土屋太鳳さん『たおのSparking day
 ○ 貫地谷しほりさん『しほりのおしゃべり工房
 ○ 大島優子さん『ゆうらりゆうこ
 ○ 演劇集団キャラメルボックス加藤昌史さん『加藤の今日

 さて、話しはTAMA映画賞に戻ります。15時50分から始まったTAMA映画賞の授賞式典は、各賞ごとに受賞対象となった作品の予告編がまずスクリーンに上映された後、司会者から受賞者の名前が紹介され、一人ひとりステージ中央に登壇されます。
 ステージ上では、受賞理由が記された表彰状が読み上げられ、花束と地元・多摩焼きで作製された茶色の陶器製の人型トロフィー(米アカデミー賞風?)がそれぞれ贈呈されます。

 今回のTAMA映画賞では、転校生日記に関連のある人たちが数多く受賞されました。『転校生~さよならあなた』の大林宣彦監督を初め、娘の千茱萸さんが審査員を務める上田映画祭の自主制作映画コンテストで第1回目に大賞を受賞した入江悠監督。『この空の花~長岡花火物語』と同じく長岡発映画となる『聯合艦隊司令長官 山本五十六』に主演をされた役所広司さん。大林宣彦監督の『あの、夏の日~とんでろ、じいちゃん』が銀幕デビュー作となった宮崎あおいさん。『BUNGO~ささやかな欲望・鮨』に主演された橋本愛さん、など-

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記②

 それでは、各賞受賞者の紹介と併せて喜びのコメントを簡単にご紹介していきたいと思います。授賞理由などについては、映画祭公式ホームページをご覧ください。

 最優秀新進監督賞を受賞したのは、『キツツキと雨』の沖田修一監督と『かぞくのくに』のヤン・ヨンヒ監督のおふたり。

 『キツツキと雨』は、役所広司さんが演じるキコリと小栗旬さん演じる新人映画監督が、映画製作の現場を通じての交流を画いた作品。エキストラとして、何度か映画製作の現場を経験したことのあるりょうにとっては、映画を観ながら「そうそう」と、自身の体験にも重ねて、とても興味深かった作品です。

 挨拶に立った沖田修一監督、「皆さん、今日はありがとうございます。『キツツキと雨』は、1から皆で考えて、1から皆で撮ってきた映画で、皆に助けられながらの撮影でしたが、本当に思い入れのある作品で、そのような作品でこうした賞をいただけるのは、嬉しく思っています。本当にありがとうございます。」と挨拶を述べられました。
 この作品は、小栗さんが演じる新人映画監督の苦悩と成長が画かれている作品ということで、劇中の監督像には、自身の体験が投影されているのですか、という質問には、「初めは、そのようなつもりはなかったが、小栗さんが撮影中の現場での自分の姿を上手に掴んでいただいて、段々と重なる部分も出てきたのかなと思います。」と話をされます。
 この日は、『キツツキと雨』に主演した役所広司さんも最優秀男優賞を受賞し、来祭されているということで、舞台上に登壇されます。
 役所さんから見た現場での監督について聞かれ「的確な演出と、監督としての想いを持っていて、しっかりとした日本映画を撮ってくれる監督」と印象を述べられるとともに、「実は、東京国際映画祭のとき、新しい映画祭用のジャケットをせっかく買ったのに、最寄駅まで行く自転車の籠に忘れてきてしまった」というお茶目なエピソードが披露されます。
 そんな役所さんからの言葉に、「本当に、このような感じで役所さんにはフォローをしていただきながら、現場の撮影を進めて行けたので良かったです。」と沖田監督。
 そして、この映画で一番印象的なのは、役所さん演じるきこりのゾンビ姿。
 役所さんにゾンビ役をお願いするとき、抵抗感はなかったのかを聞かれて、「抵抗は全くなくて、期待しかなかった。メイクをされている最中から、見たくて見たくて仕方がなかったし、出来上がった感じも、凄く楽しかった。」と沖田監督。役所さんも、ゾンビ役のオファーを聞いたとき、とても楽しみだったそうです。
 まだこのような授賞式には慣れていないのか、司会者とのやり取りでは、正面のマイクを使わずに、思わず横を向いて司会者と話をしてしまいそうになる初々しい沖田監督。「これからも、この賞に恥ずかしくないように頑張っていきます」という沖田監督は、現在、吉高由里子さん&高良健吾さん主演の映画『横道世之介』が全国公開中です。

 そして、『かぞくのくに』のヤン・ヨンヒ監督。
 この日、ヤン監督は、エストニアでの映画祭に本作品を持って参加中とのことで、代理としてプロデューサーの方が出席され、監督からのお手紙が代読されました。

 「10代、20代の頃、映画と演劇に夢中だった私に、父は、韓国、朝鮮人が日本で芸術家を目指しても、所詮、相手にされることはない。出自を隠して、何の意味があるんだ、と言いました。やってみなければ分からない、と反発し、自身の表現を模索してきた私が、やがて新聞や雑誌で紹介される度に、父がその号を買い占め、母が記事を切り取っていたと後で聞かされました。当時を思うと、在日を取り巻く時代の変化を痛感します。『かぞくのくに』というプロジェクトを立ち上げたスタッフ、3・11以降も決して揺るがなかった撮影スケジュールに全力で参加してくださったキャストの皆さんの熱い想いに今でも心が震えます。いま、映画に手を引かれるように、世界中を私は巡りながら、映画は政治や国境を越えて、人々の心を繋ぐと実感しています。監督としてやっとスタートラインに立ったにすぎませんが、自分の想いを表現できる環境に、幸せを噛み締めながら、これからも魂を込めて作品を創っていきたいと想っています。大きな叱咤激励をありがとうございます。」とメッセージが読み上げられました。
 この『かぞくのくに』は、ヤン監督自身の家族の逸話に基づいて製作された、監督初の劇映画作品です。ヤン監督は、同じくご自身の家族を撮ったドキュメンタリー作品を発表したことにより、この映画のモデルとなったご家族と会うことを、いまだに国から許されていないそうです。

(りょう)

つづく


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2013年03月12日 Posted byひがしざわ  at 08:00 │Comments(0)未来に紡ぐ

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