映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記⑤

 映画ファンを魅了した事象に対し表彰される『特別賞』。
 本年度は、ありあまる母性によって自らが破綻していく、『KOTOKO』の壮絶な女性像に対して塚本晋也監督&Coccoさんに、また、映画界に新風を巻き起こした『SR サイタマノラッパー』シリーズの快進撃に対して入江悠監督及びスタッフ・キャスト一同に贈られました。

 この日、塚本晋也監督とCoccoさんは、お仕事の都合ということで、来祭できませんでしたが、「母親なら誰しも感じたことのある、弱い存在を抱えて世界と向き合わねばならない恐怖を、塚本晋也監督とCoccoの創造力をもってこの上なく美しく痛ましい映像で表現し、生きていくことへの覚悟を示してくれた。」と受賞理由が紹介され、会場には塚本監督からのビデオメッセージが流されました。
 塚本監督は、Coccoさんがデビューした当時から、初めて歌を聴いたときに、詞の世界がはっきりと映像として見えたこと、そして、Cocco自身さんが歌っている姿そのものが、とても魅力的に伝わってきたので、監督自身Coccoさんの描く世界を見てみたいという気持ちから、いつか自分の映画に出演してもらいたいと思っていたそうです。何度かトライしていく中で、『KOTOKO』には出ていただけるということになり、監督にとっては特別な作品となったそうです。映画の撮影開始直前に、東日本大震災があり、自分の身の回りで、子供のことをもの凄く心配している母親の姿など、全部が『KOTOKO』とシンクロして、全部がその瞬間に集まって爆発したような映画になっています、とメッセージを寄せられました。

 続いてが、『SR サイタマノラッパー』シリーズの入江悠監督が、スタッフ・キャストを代表して登壇されます。
 「シリーズをとおして、インディーズ精神はそのままに、出演者、制作者一丸となって本格派エンタテインメント作品へとステップアップしていった快進撃は映画ファンを熱狂させた。」と読み上げられた表彰状を受け取ると、授与式の途中で、作品にちなんだ色とりどりのラッパー軍団が突如壇上に乱入。会場が拍手に包まれます。

 「ちょっとタイミングがね、ずれましたね」と入江監督。
 それでは、ということで、ラッパー軍団は、一旦引き揚げます(笑)

 司会者も、少し笑いをこらえながら、監督に授賞の挨拶を促します。
 「インディーズが、なぜインディーズと言われるのかというと、縛られることが何もないから。誰からも怒られないということで、今日はスペシャルゲストを呼んでいます。カラフルな人たちが来ていますので、SHOUGUNとそのクルーの皆さんです。どうぞ。」と仕切り直しの登場に会場は大爆笑の渦に包まれます。

 ここで、赤、黄、青など色とりどりのつなぎを着たラッパー軍団が再び登場。
 「せっかくなので、皆さんひと言ずつお願いできれば」とマイクを向けられた主演の駒木根隆介さん。
 「ここでかましちゃってください。」と入江監督。
 YOYOYOYO~♪と、ラップのリズムに乗せて皆さんからひと言ずつ。会場には手拍子が響き渡ります。今回の受賞者の作品にちなんだラップを即興で披露します。

 (この日のラッパー軍団の活躍は、『SR サイタマノラッパーシリーズ公式ブログ』にて詳しく紹介されています。)

 お祭りを盛り上げるパフォーマンスが終わり、「時間の関係もあるので、それでは、先に進みましょう」という司会者に「大林監督の話が伸びるから大丈夫」と笑いを取る入江監督。
 ラッパー軍団の登場は、大林監督も非常に楽しかったようで、『この空の花~長岡花火物語』の公式サイトでも触れられています。

 今後の抱負と、今後のご予定を聞かれた入江監督。
 「僕としては、『サイタマノラッパー』はⅢで一応終了と考えています。」と言うと、会場からは「えーっ」という声が。
 「一時期は、寅さんシリーズみたいに全国を巡ろうと思ったのですが、残念ながら、僕らの後ろには松竹さんがいなかったということで(笑)、三部作ということで、ひとつ区切りをつけたいと思っています。昨日DVDも出ましたので、機会があったらぜひ観てください。ありがとうございました。」

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記⑤
(開場時刻には、この日を待っていた映画ファンで長蛇の列が)

 続いての表彰が、本年度最も心に残った女優を表彰する最優秀女優賞。
 こちらは、『わが母の記』&『天地明察』&『ツレがうつになりまして。』&『おおかみこどもの雨と雪』で、宮崎あおいさんと、『わが母の記』で樹木希林さんが受賞されました。
 一番華やかな最優秀女優賞ですが、この日は、おふたりともお仕事の都合で来祭ができないということで、代理の方がトロフィーを受け取られ、少し残念でした。
 代わりに、宮崎あおいさんからは、ビデオメッセージが流されました。
 「皆さん、こんにちは。宮崎あおいです。本日は、会場に伺うことが出来ず、とても残念に思っています。すいません。第4回TAMA映画賞最優秀主演女優賞をいただき、本当にありがとうございます。『わが母の記』は、何だか不思議な感じの作品で、テンポも良く、色々なところから家族の声がたくさん飛び交って聴こえてくる感じが、観ていてワクワクしたというか、初めてこういう映画を観たと思いました。監督は、凄く作品にこだわりをもって創っていらっしゃって、細かいところまで観ている方なので、毎日ハードでしたが、凄く楽しかったですし、何より出来上がった作品を観たときに「原田監督は凄い」と思いました。現場は、女性が多かったので、手芸部だねと言いながら、みんなで編み物をしたり、たまにそこに役所さんが入って来られて、でも、女性ばかりなので、たぶんあまり居心地が良くないと言いますか、居場所がなかったみたいで、すぐに外に出られたりしていましたが、温かい現場でした。今後のご予定ですか。そうですね。こうして素晴らしい現場に参加をさせていただいて、一緒に作品を創ることに携われるのは凄く幸せなことだと思うので、皆がひとつになるような瞬間がたくさんある現場に、これからも関わることが出来たら良いなと思います。誠実に、ちゃんと自分のことに向き合って、頑張っていきたいなと思います。」

 また、樹木さんも、だいぶ前から予定を組んで、今日の来祭を楽しみにされていたそうですが、急遽海外でのお仕事が伸びてしまい、どうしても来ることができなくなってしまったということです。代わりにプロデューサーの方がご登壇され、ちょっとしたエピソードを披露します。
 『わが母の記』で樹木さんは、八重という主人公(役所広司さん)のお母さん役で味のある演技を魅せてくれていますが、元々は違う役でオファーがあり、一度、出演を断られていたそうです。
 「その後、原田監督と色々話し合う中で、今回の役を配役されて、ご出演いただけたことは、とてもラッキーなことで、その幸運のおかげでこの映画が完成しました。あらためて、この場を借りて樹木さんには感謝を申し上げたい。そして、この作品に関わったキャスト、スタッフ、今日、作品をご覧いただいた皆さまに感謝を申し上げたいと思います、ありがとうございました。」とエピソードを語るプロデューサー。

映画の未来へ~第4回TAMA映画賞訪問記⑤

 そして、本年度最も心に残った男優を表彰する最優秀男優賞は、『わが母の記』&『キツツキと雨』&『聯合艦隊司令長官 山本五十六』で役所広司さんが受賞。奇しくも、最優秀女優賞のおふたりと最優秀男優賞の受賞者が全員『わが母の記』からの選出となりました。

 受賞コメントを促されて、「ありがとうございます。受賞のコメントを『サイタマノラッパー』のようにラップに乗せて伝えられれば良いなぁと思いながら、袖で見ていました。」と場内の笑いを誘う役所さん。
 「こういう賞は、めったにもらえないものですし、本当に脚本や監督、スタッフやキャストとの出逢いがあって出来上がるものだと思っていますので、久しぶりにこういう賞をいただけて本当に光栄です。これからも、新人のつもりで1本1本頑張っていきます。どうもありがとうございます。」と言葉を続けます。

 新たな代表作が次々と公開された2012年、「こんなにやるという年はあまりないのですけれども、今年は素晴らしい作品や監督と出逢えて、非常に忙しかったですけれども、素晴らしい1年だったと思っています。」と1年を振り返られます。

 『わが母の記』では、作家の井上靖さんの役を演じられた役所さん。役作りの秘訣について、「スタッフの皆さんが、井上靖先生やお母さんの資料を色々と集めてくれました。それを読むことと、一番役作りにとって大切だったのは、写真が年代別にあったのですけれども、井上靖先生の変化ですとか、お母さんの変化ですとか、そういうものが写真で凄く伝わってくるものがありました。井上靖先生にお孫さんができたころ、急に表情が温和な感じになってきていたのが印象的でした。」と裏話を披露されます。

 今回、最優秀女優賞を受賞した『わが母の記』で共演したふたりについて、まずは母親役の樹木希林さんの印象を聞かれると、「怪女優でしたね。」とひと言。会場は大爆笑に包まれます。
 「でも、本当に樹木希林さんは大先輩ですし、素晴らしい女優さんですから、一緒にシーンを創ることが、非常に楽しかったです。」と言葉を続けます。
 そして、娘役の宮崎あおいさんとは、2001年公開の『EUREKA ユリイカ』以来の共演。
 「本当に、あおいちゃんとは、13歳のときに『EUREKA ユリイカ』という映画で一緒になって、そのときは本当に良い芝居をする才能があるなぁ、と思って見ていたのですが、それ以来となる、今回一緒にお芝居をさせていただいて、本当に素晴らしい魅力的な女優さんになったなぁと感動しました。」と印象を語る役所さん。
 想像どおり成長をされていたということですか、との問いかけに「そうですね。」と即答します。

 三谷幸喜監督の新作時代劇を撮影中という役所さん。作品の内容について「清州会議という原作を三谷幸喜さんが書かれまして、それを映画化したものです。その中で、柴田勝家という、歴史上では、そんなにスター性のない人物ですけれども、その役を演じています。」
 ということで、今後の抱負と予定を聞かれて、「今後の予定は、(『キツツキと雨』の)沖田さんがこの後は用事があるようなので、今日はまっすぐ家に帰ります。」と茶目っ気たっぷりに司会者との掛け合いを楽しむ役所さん。
 出演予定をお願いしますとのツッコミを受けて、「いま三谷監督の映画を撮影していますが、本当に若くて個性的な素晴らしい監督がたくさん出てきていますし、日本映画も興行的には大成功しています。その中でも、渋めの映画もどうぞ皆さん観に来ていただいて応援してください。僕たちも頑張っていきます。どうぞよろしくお願いします。」と映画界の大先輩らしく、映画愛にあふれた素敵な言葉で締めくくられます。


 そして-

 蓮佛美沙子さん、白百合女子大学ご卒業、おめでとうございます☆

 4年間、学業と女優業の両立は、楽しい想い出とともに、苦しいときもたくさんあったことでしょう。
 本当に、よく頑張ったね!

 明日から、また新たなステージに立つ蓮ちゃん。
 これからは、たくさんスクリーンで出逢えるようになるかな。
 楽しみにしています♪


(りょう)

つづく


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2013年03月15日 Posted byひがしざわ  at 08:00 │Comments(0)未来に紡ぐ

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