川越スカラ座☆トークショーレポート ⑤

続いて、市川森一さんの脚本のお話に。ここでも詳しくは避けますが、
ラストのとし子のシーンについて、

現実の人生でも、死んだ人は、ちゃんと心の中で生きている。
人間、前ばかり見ている。でも、ふり返らなければ、
亡くなった人も頭の後ろにきちんといるんです。
人間には、「観察する力」と「想像する力」の両方が備わっている。
目に見えるものだけを信じる傾向にある情報化社会では、「観察する力」ばかりを使っている。
(人間の目・鼻・口・そして耳まで、すべて前を向いてついているね。
人間は元々変な生き物なんです。とも)
映画も映像のひとつ。
だから情報にもなってしまう。
だけど、映画の役割は、目に映っていない「想像する力」を描くもの。
CGでも、心のなかは描けない。
想像すれば、見えないはずの心も見える。
映画は、その目に見えないものを手繰り寄せ、
心の中で観てもらい、感動してもらうものである。

だから、今回の『その日のまえに』も、現実としてつながらないことは当たり前。
ストーリーではなく、心の中でつながってくれれば良い。
これが映画としての本当のシナリオでもある。

川越スカラ座☆トークショーレポート ⑤

話は、宮澤賢治さんへ…
脚本の市川さんが、原作小説中の宮澤賢治「永訣の朝」で7編を
まとめられたことは、この日記でも何度か触れています。
小説ではこの「永訣の朝」以外にも、駅長くんは銀河鉄道、
筧さんや今井さんの役は宮澤賢治的登場人物であり、
また海岸のシーンは、宮澤賢治のおじいちゃんが溺れた子どもを
助けようとして海で亡くなられていることにもつながる。

「もしかして、原作も宮澤賢治つながり?」と監督も思ったそう。
これに対し、原作の重松清さんは、
「そこまで気がついてなかった。でも、そんな予感がきっとあったのでしょうね。」

映画とは、つじつまの合った夢。
偶然も出来上がるとつじつまが合ってしまうものなんだよ、と監督。

ここで、インタビュアーからも、最近新しい宮澤賢治の詩も発見されました、との話に監督も、
「つじつまが合ってくるもんだねぇ」と大変驚かれていました。

川越スカラ座☆トークショーレポート ⑤
(上映作品紹介の手作りのポスターも。
作品の重要なモチーフとなるたんぽぽがとっても温かい絵です。)

また、『クラムボン』の音楽についてのエピソードもお披露目されました。
監督は、いつか宮澤賢治の『クラムボン』を映画化したいと心に秘められていたそう。
それは、『クラムボン』は具体的な姿・形が一切描かれていないから。
(その理由は、しげぞーさんによる深谷シネマレポートにも記されていましたね。)
だから、セロ弾きの名前は『クラムボン』に。

それを聞いた事務所の若い助監督さんが、
「いいですねぇ。クラムボンの歌、聴きたいなぁ」と、『クラムボン』誤り(笑)。
それで、監督も音楽グループの『クラムボン』の存在を知り、作曲してもらうことに。

これも、偶然のつじつま、運命の仕掛けだね。

川越スカラ座☆トークショーレポート ⑤
(この日、ロビーも活気にあふれていました。)

続く

りょう



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2009年05月15日 Posted byひがしざわ  at 08:00 │Comments(0)未来に紡ぐ

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