映画「異人たちとの夏」浅草ロケ地めぐり 後篇

「ビールがいいよな。」
「は?」
「暑いから、ビール飲みてえだろう。冷蔵庫にゃ1本しかねえんだ。
ありゃ、飲んじまうってな。」
「私が買います。」
「そんなこというなよ。」
缶ビールを買う2人の背後に、日本最古?の遊園地「浅草花やしき」
名物「Beeタワー」も映りましたね。
ご存知、花やしきのシンボルタワーで、日本家屋の形をしたゴンドラが、
高く高くあがりながら、回転します。
地上45mからの眺めは最高!!
浅草の街並みが一望できます。

映画「異人たちとの夏」浅草ロケ地めぐり 後篇

そして「父」に連れられ向かった家には「母」も。
そして原田の「異人たち」との夏が始まりました。
28年ぶりに再開した「両親」と久しぶりの水入らずの
素晴らしい時間を過ごした原田、しかし・・・。

生きる者が死せる者たちと交流を持つことにはそもそもムリがあるのでしょうか、
彼は徐々に生気を失い、はた目にはすっかりやつれてゆくのでした。

そのことを自覚した原田は、遂に「両親」との決別を決意します。
そして、最後の思い出づくりにと、子供のころ、
誕生日によく連れていってくれたあの料理店に2人を誘います。
両親に会えて本当に幸せなこと、このまま会い続けて死んでしまっても構わないこと、
などなど、胸の内を涙ながらに語る原田に、「両親」も納得し、外食に同意します。

家を出て一同は縁日のように賑わう街を歩きます。

「八ツ目鰻は精がつくよ。しっかり食べて、長生きをおし。」
「ありがとさん。」
「はい、ご油断なく。」

とある露店で八ツ目鰻を買い、1串ずつ3人で食べます。
八ツ目鰻は普通の鰻とは違う種類です。
体形は「鰻」と似ていますが、分類上は円口類に属する特殊な魚です。
本当の目1対とその後ろに7対のエラ穴が一列に並んで目が8つあるようにみえるので、
こう名づけられたわけです。
また、八ツ目鰻には背骨やあご、胸びれ、腹びれがありません。
ビタミンA、B類、D、E・鉄のほか、最近話題のDHAやEPA等、
様々な栄養が豊富に含まれているとか。
特に「目」のビタミンと言われるビタミンAが突出し、昔から「目の弱い方」や「体の疲れ」に
とても良いと珍重されてきました。
浅草には、国際通りの角に八ツ目鰻の専門店「八ッ目漢方薬局」さんが店を構えておられます。
日本で唯一の専門店として、八ツ目鰻の蒲焼きをいただくことができます。
お土産もありますよ。
(蒸さずに焼くこともあってか、普通の鰻より歯ごたえがあります。
幾分漢方薬っぽい風味もありますが確かに滋養はありそうです)

映画「異人たちとの夏」浅草ロケ地めぐり 後篇
映画「異人たちとの夏」浅草ロケ地めぐり 後篇

そうそう、書き忘れるわけにはゆきません。
映画の八ツ目鰻屋さんは、本多猪四郎監督ですね。
ご存知「ゴジラ」シリーズをはじめ、東宝特撮の名作映画を数多く撮られた名監督さんです。
晩年は黒澤 明監督のもとで、演出補をされていました。
大林作品では他に、「水の旅人」で主人公・悟の亡くなったおじいちゃん役で
「遺影」として出演されました。
もう1つ。
セリフにあった「ご油断なく」。
最近の「22歳の別れ」でも、エンディングで筧利夫さんが口にされてましたね^^。
(「22歳・・・」を観ていて「あ、八ツ目鰻だ!」と思い出しました。)

そして寿司屋横丁を通り、目的地の料理店へ。
浅草のすき焼きの名店「今半 別館」さんです。

映画「異人たちとの夏」浅草ロケ地めぐり 後篇

仲見世の1本隣の小路沿いにあるこちらは、玄関も「和」な雰囲気たっぷりです。
「いらっしゃい~。3人さん、ご案内~。」
「は~い、3人さん、お2階になります。」

映画「異人たちとの夏」浅草ロケ地めぐり 後篇

卓を囲み、すき焼きを注文する3人。
あの、子供のころのことを思い出し、そして当時孝行できずに終わったその両親に、
ようやくごちそうできるようになったことにしばし幸せを感じる原田。
しかし、そんな時間は長くは続かないのでした。

母 「お父ちゃんは黙って!」
父 「そんな言い方するなよ。」
母 「分からないの?もうあんまり時間がないのよ。だから仲居さん行かせたんじゃない。」
原田(両親の顔を交互に見ながら)「・・・?もう行っちゃうの?」
父 「・・・何にもいうな。もう何にもいうな。」
母 「あんたをね、自慢におもってるよ。」
父 「そうとも。自分をいじめることはねえ。てめえでてめえを大事にしねえで、誰が大事にするもんか。」
原田「行かないで!」
父 「ダメらしいや。もうちょっと間があると思ったんだが。」
原田「いやだ!」
母 「体を・・・大事にね。」
父 「もう会えねえだろうが・・・」
原田「ありがとう。どうもありがとう。ありがとうございました。」
母 「さようなら・・・」
父 「あばよ・・・」
原田「さようなら。。。(涙)・・・ちっとも食べなかったじゃないか・・・ちっとも。」

夕日とともに両親が徐々に消えてゆくこのシーン、何度観ても涙ですね。

実際の撮影はセットで行われたそうですが、
お店のイメージはしっかり作りこまれていましたね。
以前一度「ロケ地めぐり」がてら知人と一緒にお邪魔してすき焼きをいただいたことがありました
が、玄関、そして映画の中で雀が戯れていた廊下、座敷・・・どれもそのままでびっくりしました^^。

「両親」の暮らす木造アパート(や「跡地」の空き地)なども含めて、
この作品では、セットの精緻さが1つの特徴ですね。

遠くの世界に行ってしまって会うことのかなわないご先祖さまや大切な方々・・・
そんな存在とひと時ではありながら再会できるのがお盆です。
「その日のまえに」の花火のように迎え火でお迎えし、
お盆が終わることにはまた送り火でお送りし、また会える時までしばしのお別れ。。。
皆様も、ちょっとだけでも思い出してさしあげてくださいね。

しげぞー



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2009年08月18日 Posted byひがしざわ  at 08:00 │Comments(2)ロケ地巡り

この記事へのコメント
この記事を読んで、「異人たちとの夏」を久々にDVDで観直しました。
私も原田と同じような年齢になり、昔観たときとはまた違って
リアルに観る事が出来ました。
ちなみに父母は健在ですが、いつかこう思う、思われたいと思う日が来るのでしょうか。
死んだはずの若き両親と再会する洋画といえば
「フィールド・オブ・ドリームス」がありますが、全く感覚や死生感が違うなーと感じますが、どっちも、好きな映画です。
Posted by つのきち at 2009年08月23日 18:14
つのきちさま、こんにちは。
ご無沙汰しています。コメントありがとうございます。
確かに“異人たちとの夏”と“フィールド・ドリームス”、
日米の死生観の違いが出ていますね。
そして、映画の中では止まっている時間、生きている自分の
流れている時間、それらを思いながら久しぶりに見る映画は
また格別に心に沁みてきますね。
Posted by ひがしざわ at 2009年08月25日 00:17
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