おのみちまちあるき。。。第38話「千光寺山の住民たち。」前篇

おのみちまちあるき。。。第38話「千光寺山の住民たち。」 前篇

千光寺山の山頂から中腹にかけては千光寺公園が広がり、
春は桜、つつじが咲き、初夏は藤の花、秋には菊花展の菊がキレイです。
園内には市立美術館や文学のこみち
(「転校生」で2人が痴漢を撃退する場所)などもあり、
山頂の展望台からは尾道市内が一望できるとともに
瀬戸内海の島々が眺められます。
天気の良い日は四国を遠望することもできます。

千光寺山は聖域でしたが、明治に入り千光寺の檀家衆や、
商売で財を成した方々が寄付を持ち寄り、
眺望を楽しめる憩いの場として「尾道共楽遊園」を作ったことから新たな道を歩み始めます。
ここでちょっと、千光寺公園の歩みについて。

西国寺の末寺として長く無住でやや荒れていた千光寺、
明治中ごろ、檀家の集まりで、
三木半左衛門という方が1つの提案をしました。
徳島から藍商人として尾道にきた三木氏は還暦を機に諸国巡礼の旅に出かけ、
岐阜、長野善光寺から、東北、北陸と旅を続けて尾道に戻り、
「全国をまわったが尾道の景観にまさるものはない。
でもお寺が荒れ果てたままでは町の不名誉なので、石段をつくり、お寺を修繕し、
日本一の景色を市民や観光客が楽しめるようにしよう!」と。

尾道の景観は、頼山陽など数々の文化人が褒め称えていましたが、
地元の人々にとってお山はまだ聖域。
上から見下ろすより、麓から見上げる千光寺山の美しさや
尾道水道の風景で満足だったのです。
また、千光寺へ上る参道は細く曲がりくねり、
お年寄りや子供にはとても登りにくい道でした。
(その名残が「千光寺旧道」や「裏参道」だったわけです。)

三木氏は豪商たちに呼びかけて寄附金を集めるとともに工事を進め、
公園の名を「尾道共楽遊園」と命名、
今も残る藤棚や桜の植樹を始めたのでした。
更に、多くの人が参拝、
頂上からの景勝を楽しんでほしいと石段542段を完成させました。

そんなおり、家業を継いでいたご長男が急逝、
心身も経済面も大打撃を受けた三木氏は完成間近の公園を見ながら、
完成で終わりではなく維持管理が必要と考えて、
檀家衆と相談のうえ土地所有者の千光寺から尾道市に寄付し、
運営管理を市にお願いすると決めたのでした。

尾道市へ寄付された「尾道共楽遊園」は整備され2年後に完成。
「千光寺公園」と名前を変えましたが、
町の人々ばかりか全国から観光客の集まる場所として利用されています。
正面右が「見晴亭」、その左に広がる広場が、元「共楽遊園」です。
広場すぐ上の道標にも「左・新公園 右・千光寺」とあります。
山頂の公園ができて中心地が移っていったことを想像させますね。

おのみちまちあるき。。。第38話「千光寺山の住民たち。」前篇
おのみちまちあるき。。。第38話「千光寺山の住民たち。」前篇

大正4年ころの「尾道案内」には「千光寺公園」の隆盛が述べられているそうです。

 「千光寺公園は、これ共楽園と称し、総坪数1347坪を有する
 天然の形勝を加える に、池をうがち、魚を放ち、庭をつくり、
 茶寮を設け、花樹を植え、草花をまき、その他
 幾多の人工を施し、春の桜桃、夏の緑陰、秋の紅葉、冬の雪景、
 いずれも画趣 ならざるが中において、陽春3月、桜樹数百株、満山これ花かととまどう共楽園の
 夜桜は、花下に宴飲歌舞するも幾百千、弦歌洋々として湧くところ、行楽の土女
 織るが如く、542段燈道は人をもって埋められ、すこぶる雑踏壮観を極め、付近に
 料亭、貸席、喫茶店等を営むもの少なからず」
    (以上、「千光寺山荘」ホームページ掲載の記事より抜粋)

続く

しげぞー



同じカテゴリー(おのみちまちあるき)の記事画像
おのみちまちあるき。。。第49話「これが噂の・・<↓山>。」
おのみちまちあるき。。。第48話「いざ、お山に。」 後篇
おのみちまちあるき。。。第48話「いざ、お山に。」 前篇
おのみちまちあるき。。。第47話「六地蔵様。」
おのみちまちあるき。。。第46話「国宝のお寺、浄土寺。」後篇
おのみちまちあるき。。。第46話「国宝のお寺、浄土寺。」前篇
同じカテゴリー(おのみちまちあるき)の記事
 おのみちまちあるき。。。第49話「これが噂の・・<↓山>。」 (2009-07-06 08:00)
 おのみちまちあるき。。。第48話「いざ、お山に。」 後篇 (2009-07-03 08:00)
 おのみちまちあるき。。。第48話「いざ、お山に。」 前篇 (2009-07-02 08:00)
 おのみちまちあるき。。。第47話「六地蔵様。」 (2009-06-29 08:00)
 おのみちまちあるき。。。第46話「国宝のお寺、浄土寺。」後篇 (2009-06-26 08:00)
 おのみちまちあるき。。。第46話「国宝のお寺、浄土寺。」前篇 (2009-06-25 08:00)

2009年05月28日 Posted byひがしざわ  at 08:00 │Comments(0)おのみちまちあるき

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。