変わらないもの ③

続いて、7月25日(土)に鏡山酒造跡地で行われた東洋大学理工学部建築学科による
『まちかど講評会』の模様をレポートします。



東洋大学理工学部建築学科では、日頃からキャンパスのある地元川越との連携を図り、
これを「川越学」と呼んで学生の教育や研究を進めているそうです。
『まちかど講評会』はその一環として、例年3年生の「建築設計」の授業において、
川越を敷地として提案を求める設計課題を出し、町なかで地域の人や観光客に対して、
作品展示を行っているものです。
今年の課題は、郭町の川越城本丸御殿とその周辺を敷地に想定し、
小江戸川越の『まちなかビジターセンター』を提案するというものでした。
川越の東の玄関口の拠点として、車で川越を訪れた観光客が歩いてまちを回遊し、
また周辺住民と観光客の交流の場となる集会場やライブラリー、
休憩所を核とする新たな交流の場をつくるというのがその内容です。
いわゆる課題敷地を設定した建築コンペですね。
この講評会は、数年来続いている企画で、過去には会場となった
ここ『鏡山酒造跡地』が計画敷地として設定されたこともありました。

昨年の路地サミットでも、大分大学工学部建築コースでのこうした学生の取り組みの模様が、
姫野助教により発表されていましたね。





(建築予定地は、市立美術館と川越城本丸御殿、三芳野神社に囲まれた地帯。
現在、川越初雁球場がある一帯の駐車場です。三芳野神社は、『つばさ』にも登場しましたね。)

発表者は未来の建築士の卵たち。
それぞれ学生さんたちによるプレゼンテーションの後、
ゲストクリティークとして建築士の山本想太郎氏による講評が行われました。

今回展示されていたのは、全部で21作品。
どの作品も、学生らしい斬新さのなかにも、川越市のおかれた状況や人の行動特性(直線的)、
目線(真っ直ぐ前を見る)など科学的な検討に基づいた提案がされていました。

作品の一例を紹介すると…
・ろじの先でみつけたもの
・つなぐ道
・ハレトケ
・マチのはじまり
・リュウドウ
…などなど



どの作品も周辺環境との調和や路地の概念、日常と非日常との交流などを取り入れて、
良く考えられていました。

ゲストクリティークの山本想太郎氏からは、講評のなかで…
①歩車分離は、20世紀の古い概念。
今後は、人と車の新しい関係が生まれてくるのではないかな。
車は、自分で自由に運転できる乗り物。
だから、形こそ変わっても、最後まで残る交通手段だね。
②ビジターセンターは、必ず訪れなくてはならない施設ではない。
だからこそ、行ってみたいと思わせる仕掛け、もしくは来たら得をするような工夫が必要。
③路地はネガとポジの関係。建築物の結果として路地は生まれる。
だから、意図的に路地を作り出すことはなかなか難しい。
④設計の際は、図面上での二次元としてではなく、立体としての完成形を捉えるように。
また、建物内部からの視点だけではなく、
外部から見た時にどのようにとられるのかを想像すること。

…などのコメントがありました。


(学生作品のひとつひとつを講評する山本氏)

続く

りょう  


2009年09月23日 Posted by ひがしざわ  at 08:00Comments(0)未来に紡ぐ